ハーフが会社に就職してみた_第21話_会社を辞めてみた

ハーフがカイシャに就職してみた最終話。ゴリゴリの日系企業に4年半勤めてみたハーフが、カイシャを辞めた。

「日本以外の会社」を知る事の使命感

 

 

コダモンです。

 

 

ハーフであるコダモンが、日本のカイシャに就職してみた話。  

 

 

第21話:さようなら。カイシャを辞めてみた。

 

 


 

 

ドイツ人の働き方に感化されたドイツハーフ。

 

 

国と文化の壁を越えられないまま、ドイツで「日本式」に働く駐在員たち。そんな彼らに紛れながら、なんとか頑張って「ドイツ寄り」に働いていました。

 

 

しかし…。

 

 

日本人上司は、常に目と鼻の先にある部屋で待ち構えている。

 

 

別に彼らの顔色を伺う気はないのだけど…。

 

 

上司が相変わらずいつまでもいつまでも残業している中、「ドイツ式」を長く続けるわけにもいかなかったのです…。

 

 


「充実」も感じられた駐在経験

 

 

駐在生活には、大きな不満はありませんでした。

 

 

そもそも不満を言える立場じゃないけど…。それよりも何よりも、本社時代に経験した法人営業よりは格段に充実していたのです。

 

 

自分の中では、日本で営業活動をしている時期がサラリーマン生活の底辺でした。

 

 

その理由は、ワークライフバランスが崩壊していたから。

 

 

そして、それがドイツには無かった。

 

 

ドイツでは、取引先である客さんも「外国人」であるため、その仕事に対する姿勢と要求がまず違う。

 

 

どの顧客も、その対応はあくまで紳士的だし、夜にメールが飛んできたり電話がかかってくることなどは、まずありえませんでした。

 

 

そのため、ドイツ駐在となった今、1人のサラリーマンとしての「仕事」のストレスは減っていたのです。

 

 

それに加えて、まがりになりにも母国語を駆使して社内外の折衝業務に従事してみたら、けっこう成果は出ていた。

 

 

「グローバルに活躍したい!」

 

 

そのような目標も、海外勤務を通して「グローバルに活躍できる」という自信に変わっていました。

 

 

しかし…。

 

 

それでも「何かが違う」という気持ちは、自分の中からなくならなかった。

 

 

「ないものねだりをするな!」

 

 

そんな声も聞こえてきそうですが…。モヤモヤは消えません。

 

 

ドイツで感じた「何かが違う」という感覚は、日本のカイシャに就職してみた時からずーっと感じていた事なのです。

 

 


終わりが近づく海外出向

 

 

駐在員生活も2年目が終盤に差し掛かった時、コダモンの任期も終わろうとしていました。

 

 

まずは2年間の出向という話だったので、このまま行けば「あと数か月で日本の本社へ帰任」です。

 

 

それでも、ほとんどの出向者たちは本社の意向で3年…4年と、延期が決定して海外勤務が長くなるケースが多かった。

 

 

コダモンもご多分に漏れず。

 

 

「お前はあと数か月で帰任だ!」

 

 

そのような本社からのお達しは、ありませんでした。

 

 

むしろ、ドイツハーフのおかげで拠点間のコミュニケーションは潤滑になったので…。適材適所で重宝されていた。

 

 

このままおとなしく働き続けていれば、駐在員生活も1年、また1年と、ある程度までは自動更新されていたことでしょう。

 

 

けれど…。

 

 

「自分はこのままでいいのだろうか?」

 

 

そう考える自分の中のモヤモヤした気持ちは、全くぬぐえてい なかった。

 

 

日々の業務の中で、周りのドイツ人たちの働き方に感化されたコダモン。

 

 

そして、1度でもそのポジティブな影響を受けたら…。そこからの「後戻り」はできませんでした。

 

 

ドイツ人たちは…。

 

 

 

残業をしないで、

 

 

 

毎日リフレッシュの時間を設けながら仕事をして、

 

 

 

2~3週間ほどの長期休暇を年に1~2回も取得して…

 

 

 

とてもイキイキしながら働いている

 

 

 

仕事のストレスもたくさんあるはずなのに、疲れた表情で働いているような人は、1人もいませんでした。

 

 

チームワークも大事にしながら、各々のマイルールで働いている。

 

 

その根本にある「働く姿勢」がとても健全なのです。

 

 

これを日本的に見たら…。

 

 

「休み過ぎだ!」

 

 

「ちゃんと周りの動きに合わせろ!」

 

 

「みんな働いているんだからもっと働け!」

 

 

そのような意見が、そこかしこから湧き出てくる。

 

 

実際に、日本人駐在員の間では、現地スタッフに対するグチが頻繁にありました。

 

 

現地人はドイツでは当たり前の働き方をしているだけなのに。

 

 

そのお勤め先が日系企業だろうが関係ない。シンプルに、契約時に交わした内容の仕事に従事しているだけです。

 

 

そんなドイツ人たちを横目に…。

 

 

日本人とのムダ会議に付き合って、残業している自分。

 

 

…。

 

 

なんでドイツハーフは「あちら側」にいないのだろうか?

 

 

このままズルズルと駐在期間を延長した所で、果たして何かが変わるのだろうか?

 

 

このような考えが、とうとう行動に結びついてしまったのです。

 

 


コダモンはカイシャを辞めるか

 

 

気が付いたら、ドイツハーフは転職活動をしていました。

 

 

今の自分には、いったいどれくらいのポテンシャルがあるのだろうか?

 

 

それを調べたくなったからです。

 

 

そしてもう一つ…。

 

 

日本のカイシャ以外で自由に働いてみたい

 

 

この気持ちが、もう抑えきれないところまできてしまっていたから。

 

 

…。

 

 

実際に行動に移してみたら、市場ではありがたい事に「引く手あまた」でした。

 

 

グローバルな営業経験を持ち、なおかつドイツ語と日本語ネイティブな人材は、どうやらその需要が高いようです。英語もしゃべれるし。

 

 

ここでは割愛しますが…。転職活動は、すんなりいきました。

 

 

そして、いわゆる「内定」もいくつかゲットした時点で、ふと足を止めて考えてみた。

 

 

…。

 

 

 

自分は本当にこのカイシャを辞めるのか?

 

 

 

今現在の自分のステータスは「駐在員」です。そこには経済的な恩恵もあるし、何より向こう数年間駐在員を続けることもできる。

 

 

カイシャの甘い蜜を吸い続けることは可能なのです。

 

 

日本の本社での辛かった期間を乗り越えて、ようやくつかんだ海外勤務。

 

 

自分の母国語を最大限に活かせる環境で、これからさらに結果が出せるかもしれない。

 

 

今後のビジネスの展開次第で自分のキャリアパスに大きな影響を及ぼす経験を積むかもしれないし、ゆくゆくはトントン拍子で昇級できる可能性もある。

 

 

社内のドイツハーフに対する評価は、決して悪くない。いや…。むしろその評価は良い。

 

 

それでも、自分は社内のこの「おいしい」ポジションを手放すのか…?

 

 

新しい職場で、1からスタートする準備はできているのか…?

 

 

そのような心の声にゆっくり耳を傾けて、もう1度今の自分の状況を整理してみた。

 

 


「日本のカイシャ」を振り返る

 

 

自分が勤めていたのは、決してブラックでもない、日系の大手一部上場企業。

 

 

しかし、その中身はいつまでたっても、どこへ行っても…。日本のカイシャ。

 

 

外国人だけで構成されていたドイツ支社でも、そのトップと主要ポジションに「日本人」がどっしりと座る事で、「日本的」に経営の舵取りをしたい思惑があったのです。

 

 

このような組織経営と体制は、日本の視点からは「当然」だろうし、そこに異論はありません。

 

 

成功例もあるだろうし、たくさんの失敗例もあるはず。

 

 

コダモンが海外に赴任となって、実際に見て、聞いて、経験して言えることは…。

 

 

カイシャは「グローバル」になりきれていなかった

 

 

という事です。

 

 

駐在員が現地のスタッフからシカトされているような状態。また、日本人のお偉いさんの言動がドイツ人にまったく響いてない状況。

 

 

それらは、激動のビジネスの中では他愛もない小さな事です。逐一本社のマネジメント達に伝えるような内容じゃない。

 

 

それでも…。「組織」の中では、コレは非常に重大な欠陥なのです。

 

 

表面上は、日本人同士の頻繁なやり取りの中で、全てうまくいっているように見える。

 

 

でも実際は…。

 

 

…。

 

 

そのような環境の中で「グローバル」を名乗る大手企業。

 

 

そこに「モノは試しだ!という勢いだけで入社してみたドイツハーフ。

 

 

これまでの4年と少々のカイシャ生活で、本当にたくさんの経験ができました。

 

 

そして今自分は、カイシャとの決別の一歩手前まで来ている。

 

 

 

年功序列で安定的に昇級と昇給ができるカイシャ

 

 

 

集団的に仕事をしながら「周りに合わせること」が美徳のカイシャ

 

 

 

福利厚生が手厚いとか、将来的に安泰だとか…。カイシャの恩恵は色々あります。

 

 

そんな「カイシャ」から、離れること。

 

 

1度決別したら、もうここには戻って来れない。

 

 

もう1度胸に手を当てて、今後のキャリアの事もゆっくりと考えてみる。

 

 

するとそこには…。

 

 

 

自分でもビックリするくらい不安はありませんでした。

 

 

 

これまでお世話になったカイシャを去ることに、罪悪感はない。

 

 

今後のキャリアが約束されたような環境を手放すことに、未練もない。

 

 

 

日本のカイシャ以外を1度経験してみなければならない

 

 

 

この考えが、最後まで変わらなかったからです。

 

 

海外で駐在員をして、日本勤務の時と同じように。いや、それ以上に残業と長時間労働を繰り返していた日本人社員たち。

 

 

コダモンは、自分がドイツ配属となることで「ドイツの働き方ができる」という淡い期待を抱いていました。

 

 

しかしそれは、すぐに見事に打ち砕かれた。

 

 

日本のカイシャはどこまで行っても日本のカイシャ

 

 

その事実が、良くも悪くも実体験を通して判明したからです。

 

 

…。

 

 

コダモン自身にも、いたらなかった部分が数えきれないほどある事は、承知しています。

 

 

中途採用ながら「日本の会社員経験」が無かった自分を、カイシャが長い目で育ててくれた…という理解も、ちゃんとあります。

 

 

それでも、自分の気持ちは変わらなかった。

 

 

「終わり」が見えないような、あくせくした毎日を日本で過ごしてきたドイツハーフ。

 

 

たくさん残業して、ストレスで押しつぶされそうにもなって…。ドイツへ来る前は、ほとんど逃げ出す寸前みたいな状態だった。

 

 

しかし…。今この瞬間。

 

 

自分の目の前には「終わり」がしっかりと存在しています。

 

 

4年半を勤め上げたカイシャを辞めること。

 

 

その引き金を引くか引かないかは、自分次第。

 

 

…。

 

 

日本の本社勤務時代は、上司のシノハラさんとハトリさんに、たくさん迷惑をかけてきた。

 

 

ドイツ駐在となってからはドイツ人のように働くドイツハーフに、彼ら日本人上司は満足していなかったことでしょう。

 

 

それでも、一抹の希望と期待の中で、なんとか頑張ってサラリーマンを続けてみた。

 

 

4年半で一人前になったかどうかも定かではないけれど、少なくとも…。

 

 

「自分はグローバルに渡り合える人間なのだ」

 

 

それだけは確信した。

 

 

そして、それで…。もう良かったのです。

 

 

その結果…。

 

 

 

「辞めよう」と思った

 

 

 

(ごめんなさい、シノハラさん)

 

 

そっと心の中でつぶやきました。

 

 


退職届を出してみた

 

 

人生で初めて「退職届」を書いてみるドイツハーフ。

 

 

そこにも細かいルールがあるようで、そもそも自分は「退職願」を提出するべきなのか、はたまた「退職届」であるべきなのか…? 初心者だから、ネットで調べないとわからない (笑)

 

 

不慣れながらもなんとか一筆したためて…。

 

 

意を決するように、事業部長の部屋へ。

 

 

前置きもそこそこに。スッ…と書き立てホヤホヤの「退職届」を提出。

 

 

すると…。

 

 

「…えっ!?」

 

 

…と、これまた絵にかいたような愕然とした表情をされました。

 

 

もしかしたら、彼の長いキャリアの中でも、自分が退職届第一号だったのかも。

 

 

どちらも初体験な状況に、一瞬その場がフワッとします。

 

 

「あ…ああ。まぁ座れよ」

 

 

と言って、退職届をそっとテーブルに置いて…。詳しく話を聞きたいと言われました。

 

 

…。

 

 

一通りのやり取りの後、どうやらこの上司は「このドイツハーフ…。本気だな」と悟ったようでした。

 

 

それでも、なぜか退職届は受理されず。

 

 

「一度上の人とも話すから」

 

 

みたいな事を言われました。

 

 

…。

 

 

(お前がその「上の人」だろが!!)

 

 

心の中でツッコミます。

 

 

…。

 

 

何はともあれ、そこから実際に欧州の拠点長みたいな人とも話をする事になりましたが、それでも「退職する事」とその事実は変わらない旨を告げました。

 

 

そんなこんなで…。

 

 

およそ1週間という長くて短い時間の中で、「ドイツハーフが辞める」という事が決まり、コダモンも正式に然るべきプロセスを踏むことになりました。

 

 

退職には気力と体力を消費するとも聞きましたが…。初志貫徹していれば、それほど大変でもないと感じた。

 

 

「自分は本当にこのカイシャを去るんだなぁ…」

 

 

人事部から各種通達と必要書類の記入が求めらると同時に、ようやく実感が湧いてきます。

 

 

関係者への通達がOKとなってから、社内でお世話になった色々な人に連絡しました。

 

 

 

「えーコダモン、お前辞めちゃうの?」

 

 

 

関係が比較的浅かったドイツ人同僚には、突然だったようでビックリされました。

 

 

 

「けっこう長引いたけど、ようやくだね」

 

 

 

ニッコリしながら声をかけてくれる、仲の良かった同僚。

 

 

この時点で、大事な事を相談する相手は日本人では無く、もうとっくに現地の人間だけになっていたのです。

 

 

そして…。

 

 

メールでの通達になったのが心もとなかったけど、日本でとてもお世話になった、尊敬する上司のシノハラさんにもご連絡。

 

 

あの時はとてもお世話になったこと。

 

 

たくさんご迷惑をおかけしたこと。

 

 

せっかく面倒を見てくれたのに、最後まで期待に沿えなかったこと…。

 

 

全部書きました。

 

 

そして、いよいよカイシャでの勤務もあと数日となった日に…。シノハラさんから返信があった。

 

 

…。

 

 

 

「コダモンへ

 

 

 

カイシャ生活というものは、本当に色々なことがある。

 

 

 

理不尽なことも、おかしいなと思うことも。

 

 

 

けれど、その中で誰も『間違えよう』などと思って仕事はしていない。それを忘れないように。

 

 

 

自分が『正しい』と思ってやったことはその時は正しいのだし、仮に間違っていればその都度成長するだけだ。

 

 

 

これからも頑張りなさい」

 

 

 

…。

 

 

4年半のカイシャ生活の中で、初めて涙が出ました。

 

 


カイシャを辞めてみた

 

 

「ハーフが『カイシャ』に就職してみた」

 

 

ご愛読いただき、ありがとうございます。

 

 

ここでいったん終わりです。

 

 

ドイツハーフは、退職に向けて進めていた転職活動も成功して、外資系に転職。

 

 

サラリーマン生活は続きますが、ドイツ企業で新たな人生をスタートさせました。

 

 

駐在員時代に見てきた、ドイツ人のドイツ人による働き方。

 

 

それを経験してきます。

 

 

コダモンの旅は、まだまだ続きます…。

 

 

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コメント: 2
  • #1

    Ron (月曜日, 04 2月 2019 04:32)

    Kodamonさんへ

    いつも楽しく拝読しております。とうとうこのシリーズも終わりを迎えましたね。
    長きに渡りお疲れ様でした。
    ドイツと日本のそれぞれの価値観に板挟み状態に合い、その中で葛藤を抱きながら正解を探す姿は勇気をもらえました。
    今後も記事をお待ちしております。

  • #2

    kodamon (月曜日, 04 2月 2019 20:26)

    @Ronさん
    コメントいただき、ありがとうございます。
    日本でサラリーマンをしていた当時の経験も、駐在員を経て転職まで至った経緯も、そもどれもが自分を強くしてくれました。自分の中のモヤモヤは常にありましたが、そのどれもが「ハーフが就職してみた」結果であり…。これからの長い人生の糧になったと思っています。