ハーフが会社に就職してみた_第16話_営業やってみた_4

ストレスまみれで「日本の社会人」を営業部で続けてたらとうとう自分の中での限界が来た。

営業部で限界寸前までいってみた

 

 

コダモンです。 

 

 

ハーフであるコダモンが、日本のカイシャに就職してみた話。  

 

 

第16話:「ニホンノシャカイジン」で限界を経験してみた。

 

 


 

 

国内のお客さんの担当業務を引き継いでた、ある日のこと。

 

 

その日は、これまでの担当者と一緒に客先を訪問していて、珍しく社用車で出張していました。

 

 

けっこう遠出をするので、普段は新幹線などを使って出張するのですが、「たまには」という事で、車移動をしました。

 

 

その日の帰り道。

 

 

高速を下りて、都内の渋滞にハマっていた時の車内の会話です。

 

 

その時は20時を既にまわっていて、これから社用車をカイシャに戻したら恐らく21時頃…。というような状況でした。

 

 

 

「ふぅー…。今日は移動が多かったから疲れたなぁ…」

 

 

 

そんなつぶやきにも似たことを、運転している同僚が言い始めました。

 

 

ストップ & ゴーが続く渋滞の中で、眠気も手伝ったようです。

 

 

助手席に座っていたコダモン。20時をとっくにまわっている車内で考えていたことは…。

 

 

 

「早く帰りてぇ」

 

 

 

それだけでした。

 

 

渋滞にハマっているのもイラついたけど、それよりもズルズル続いたその日の出張がウザかったのです。

 

 

そんな中…。

 

 

運転席に座っていたその同僚が、こう続けたのです…。

 

 

 

「カイシャ戻ったら仕事するかぁ…。こんな早く帰ってもやる事ないしなぁ…。」

 

 

 

「……!?」

 

 

衝撃の一言でした。

 

 

それを聞いたドイツハーフは、愕然とした。

 

 

帰社する頃には既に21時なのに、それでも「戻って仕事をする」という発言。

 

 

…この人正気?

 

 

そして…。

 

 

家に帰れば妻子が待っているのに「やることがない」という発言

 

 

この時、この一瞬の出来事に…。心底ひきました。

 

 

当時は独身だったコダモンですが、この発言は全く理解できなかった。

 

 

だっておかしいですよね? 

 

 

この人は…。

 

 

 

「家に帰って家族と過ごす時間よりも、自分の趣味の時間よりも、仕事優先」

 

 

 

そのように言っているのと同然です。

 

 

さらに、「21時」をまわろうとしているのに「こんなに早い時間」と定義して、まだ働こうとしている…。

 

 

マジで何なんだ…。

 

 

ただでさえ毎日残業して、日々の業務に明け暮れて…。さぞかし家庭を犠牲にしているかとは思いましたが、それは「大切な家族を養うため」とか、「今は我慢の時期だ」というような、何か真っ当な理由があると思っていたのです。

 

 

それなのに…。

 

 

「今この時間に帰っても、家でやることがない」だなんて!!

 

 

いったい何のために生きているの?

 

 

 

「仕事のため?」

 

 

 

それとも。

 

 

 

「カイシャのため?」

 

 

 

本当に意味不明。

 

 

この時はもう驚きを通り越して、なんだか悲しい気持ちになりました。

 

 

家族と自分を幸せにすること。そのためには、「お金」も必要です。ある程度の衣食住と娯楽が人生には必要だし、教育にも「お金」がかかります。

 

 

そのために、人はサラリーマンなりOLなりになって組織に属する選択をする。そして「給料」をもらうために働く。ここまでも理解できます。

 

 

しかし、ここからが問題。

 

 

 

いつまでもエンドレスで残業して「カイシャに尽くしている」会社員たち

 

 

 

彼らの頑張りに対する対価は、「生きがい」でも「やりがい」でもない。ただの「お金」。

 

 

心身を消耗しながら、いつまでも机にかじりついて仕事をするカイシャの人間。そこまで傾倒している自分たちに還ってくるものは、昇給と昇級。「お金」です。

 

 

そして、そこまでして頑張って稼いだお金は、家族と自分の幸せのために使うもの。

 

 

それなのに…。

 

 

 

その「お金」で幸せにすべき家族と自分をないがしろにしているのです。

 

 

 

本末転倒。

 

 

単純におバカとしか言いようがない。

 

 

「これが社会人だ!」

 

 

とか…。

 

 

「仕事なんだからしょうがない!

 

 

とか、そんな安いモノで片付けられる話じゃないのです。

 

 

残業が前提の仕事量が当たり前な日本の「働き方」。そして、そこに当然のように存在する「周りに合わせる意識」。また、昔から何千時間も残業をしてきた上司を筆頭にした、年功序列の組織体制。それらのおかげで、この同僚のような考えを持って働くオフィスの人間が、ところてん式に出来上がってしまうのです。

 

 

 

ドイツハーフは、そんな人生は絶対にイヤだと、心に誓いました。

 

 


営業の仕事で試される

 

 

コダモンが今回新しく担当することになった顧客は、前述の「働いてばかりいる同僚」が前任者でした。

 

 

彼が「家庭よりも仕事」のスタンスでそのお客サマにベッタリとくっついて尽くしてきたので、先方もいたれりつくせりの状況に満足していたのです。

 

 

夜に電話が来てもいつでもピックアップするし、何かあればすっ飛んでいく。

 

 

どうやら、これは日本では「当たり前」のようですね。「お客様は神様」の精神なのでしょうか。

 

 

何はともあれ、コダモンはまず試されることになりました。

 

 

担当を引き継いだ後も、上司のシノハラさんやハトリさんから、「この難しい顧客相手にどれだけうまくやれるか」を、常々見られています。

 

 

反骨精神も手伝って「コレはやるっきゃない!」とは思いましたが…。

 

 

すぐに心を折られることになりました。

 

 


「エンドレスな残業」が要求される?

 

 

日系の顧客を相手に営業することにより、「なぜカイシャではみんな残業が多いのか?」という事の本質を知る事ができました。

 

 

その理由はとても単純:

 

 

 

顧客もみんな残業しているから

 

 

 

「お客サマ」が働いているうちは、下請けやサービスを提供側は、帰宅できない。そのような図式がしっかり成り立っているのです。

 

 

コダモンは、日本顧客を担当することにより忙しくなりましたが、深夜まで残業するような働き方はしませんでした。

 

 

しかし…。そうやって働いていると、その「しわ寄せ」が他の人にいくことも。

 

 

とある日の出来事です。

 

 

その日は何十本もの電話に対応し、何十通ものメールを送り、その合間合間には会議もはさまれる…というような、激務の日でした。

 

 

お昼を取る時間もそこそこに、ずーっと働いていた。担当する例の顧客は、プロジェクト数も多いし毎日がてんてこまい。

 

 

それでも、20時頃には仕事がいったん落ち着いたため、さっさと帰宅しました。

 

 

次の日…。

 

 

「おはようございマース」と颯爽と出勤すると、いつもは反応の良い上司のハトリさんが、ふてくされたように座っていました。

 

 

あいさつも返してくれない。

 

 

「何かあったのかな…」とは思いましたが、いったんスルー。

 

 

すると、ハトリさんが「コダモン、ちょっと」とドイツハーフを呼び出しました。

 

 

すると…。そこから説教が始まってしまったのです。

 

 

 

「お前が昨日帰った後に、例のお客さんから急ぎの依頼があったぞ? 何とかデータを漁って俺が対応しておいたが…」

 

 

 

…と、けっこうキレています。

 

 

どうやら、昨日の自分は「その日の仕事は終わった」と思って帰宅したけど、大事なタスクが残っていたようのです。

 

 

しかし、自分のメールボックスを見返しても、それらしき痕跡は見当たらない…。

 

 

お客さんはキレ気味に、コダモンがつかまらないからと、ハトリさんに電話してきたのだとか。

 

 

そして、その怒りがそのままコダモンにも降ってきた。

 

 

 

「お前…。自分がこのお客さんの担当だという意識が足りていないぞ?」

 

 

 

説教の続けざまに、そんな事も言われてしまった。

 

 

 …。

 

 

この日の出来事が、コダモンの中で緊急アラームを鳴らしました。

 

 

ハトリさんに怒られたから、ではありません。

 

 

自分の評価が下がったから、という心配が理由でもありません。

 

 

とてつもない「危機感」に見舞われた理由。それは…。

 

 

 

「この仕事は残業を続けないと絶対にこなせない業務なのだ…!

 

 

 

という事がハッキリと、また現実問題として、判明してしまったからです。

 

 

…。

 

 

夜の20時をまわっても、当然のように働いている「お客さん」。

 

 

そして彼らは、取引相手にも、当然のように「同様の働き方」を求めて来る。

 

 

仮に彼らが23時になっても働いているのなら、その日の内に反応と返答を要求してくる事さえ、あり得る。

 

 

そのような期待に応えるため。また、その対応に備えるために…。「社内の人間」はいつまでも残業をしているのです。

 

 

それを怠ると、コダモンのように上司なり同僚にしわ寄せがいく。

 

 

まさに、残業が不可避な組織体制と「働き方」が徹底されてしまっているのです。

 

 

この事実を、日系の顧客を担当する事によって、実際に経験してしまった。

 

 

ドイツ顧客を相手にしていた時は、夕方の17時以降に連絡が来ることすらなかったのに…。

 

 

日本のカイシャの人間がいつまでも残業しているのは、残業前提で依頼をかけてくる顧客または社内の人間がいるからでもあるのです。

 

 

それからというもの…。

 

 

「24時間いつでも対応可能な営業」でいなければならないかのような、そんな錯覚さえ覚えるようになったのです。

 

 

家に帰宅しても「いつか社用ケータイが鳴るんじゃないか…」と気にしてしまったり。

 

 

一気にストレスが押し寄せてきました。

 

 


高圧的な「お客さん」

 

 

「お客サマは神様」みたいな対応に慣れきっていた、当時担当していた顧客。

 

 

彼らは、常々それ相応のフォローアップを期待しています。

 

 

コダモンの前任者は、家庭を平気で犠牲にしながら、いつまでも顧客にベットリで仕事に明け暮れていた人。

 

 

そして、そのような対応が当然だと思っているお客さんは、ドイツハーフにも、もちろん同等レベルの対応を期待します。

 

 

しかし…。

 

 

それだけはできなかった。なぜなら…。

 

 

 

自分の心身を消耗してまで「仕事」と「カイシャ」に尽くしたくなかったから

 

 

 

…。

 

 

初めて「日系企業」を担当して、しかもズブズブな関係でビジネスが成り立っているような顧客を相手に、既に疲弊している自分がいました。

 

 

ドイツ顧客を相手にしていた時のようなフラットな関係性や、ある程度ざっくり、そして「適宜」にビジネスを進めるような風潮は、そこにはありません。

 

 

昔から変わらない、不効率の真っただ中を行くような働き方で、業務に明け暮れました。一日に何枚もムダ書類を準備したり、自分とは無関係の仕事でも連絡が来たり、社内と社外の調整に追われたり…。

 

 

それでも、同僚や上司のようなエンドレスな残業は、最後までしませんでした。

 

 

本来ならば、前任者のように「残業ずくめ」でしか対応しきれない仕事量なのに、です。

 

 

そのため、いつしかどこかでボロが出るのは必至だった。

 

 

…。

 

 

そんな中、業務を引き継いで3か月ほどが経過したある日。

 

 

コダモンに苦情が寄せられました。

 

 

それは、顧客の技術部の人からでした。

 

 

そもそも、自分は「営業」なので、「技術」とか「開発」などの先方の部署とは、基本的には関わりは薄い。

 

 

それでもかかってきた電話。その人は、開口一番、急にまくしたてはじめました。

 

 

「例の案件、あと数週間で量産なのに、まだ○○ができていないんだって? ふざけんじゃねーよ!」…と。

 

 

こっちは寝耳に水。しかし、お客さんは止まりません。

 

 

どうやら、意思疎通の問題があり、とあるプロジェクトが知らない所で「止まってしまっていた」らしいのです。

 

 

それ自体はけっこう大変な事。そして、このお客さんは、スケジュール管理を担当する営業であるコダモンに、とりあえず怒りをぶつけに来た。

 

 

その場は、「こちらからスグに伺う」というテンプレの対応をして、何とか収まりました。

 

 

しかし、コダモンの気持ちはまったくおさまっていません。

 

 

 

「何で『たかが仕事』でここまで言われなきゃいけないんだ…?」

 

 

 

もちろん、この件に関してはこちらにも非があります。

 

 

顧客の営業担当として、また、全てのプロジェクトを潤滑に進めるための先導者として、真っ先に自分に矛先が向くのも、理解はできる。

 

 

しかしながら、問題の根本は、技術関係の擦り合せから来ているもの。もっと突き詰めていえば、営業担当であって、実際の現場(工場)にいない自分が把握できる範囲には、限界がある。

 

 

要するに…。

 

 

 

エンドレスで残業をする仕事量を確保してはじめて、全ての「穴」を埋められるような働き方ができるのです。

 

 

 

しかし、コダモンはそれを実行しなかった。

 

 

その結果の、今回の苦情。

 

 

…。

 

 

この時も、上司のシノハラさんとかハトリさんに、ちょっとだけ詰め寄られました。

 

 

しかし、業務上のミスであれ何であれ、相手が「お客さん」であれ、そこまで「高圧的」にまくしたてられる筋合いはない。

 

 

ドイツハーフは、全く納得いきませんでした。

 

 

自分が「ニホンノシャカイジン」になれていないと言うのなら、それで結構。

 

 

プライドを捨ててまで、仕事ごときにすがりつく気は毛頭ありません。

 

 

それでも、カイシャの対面上「穏便に低姿勢に」対処する必要があるため、これも本当にストレスが溜まりました。

 

 


ちょっと限界を経験してみた

 

 

そんなこんなで、ドイツハーフお腹いっぱいになってしまいました。

 

 

部署内でも有名だった、「お荷物」な日本のお客さん。

 

 

その担当になって、たった半年ほどの出来事でしたが…。その短期間の間に、自分でも驚くほど消耗しました。

 

 

ドイツにいる時からウワサに聞いていた…。

 

 

 

ストレス大国ニッポンの「サラリーマン」

 

 

 

それを、身をもって経験できたのです。

 

 

自分は今、都内の中心地で、カイシャに属しながら…。確実に消耗している。

 

 

…。

 

 

担当する顧客のプロジェクト毎のタスクと、それぞれの「納期」に追われながら、ただひたすら仕事をした。

 

 

自分のプライベートの時間には、とっくに支障をきたしていました。

 

 

残業もこれまでにないほどたくさんしたし、社内のどうでもいい雑務なども同時にこなした。

 

 

その結果…。

 

 

 

毎日夜遅くに帰宅するので自分の時間が全く持てなくなり…。

 

 

 

帰宅したらしたで、ゴハンを食べて寝るだけの生活になり…。

 

 

 

休日に友人と過ごしている時でさえ、仕事の事が頭にチラつくようになり…。

 

 

 

日曜日の夕方になると急に憂鬱な気分になって…。

 

 

 

月曜日の朝のカイシャへの足取りがとても重くなった。

 

 

 

…。

 

 

 

ストレスで自分を見失いそうになりました

 

 

 

そして、このようなカイシャ生活と働き方を続けることが、不可能だった。

 

 

ドイツハーフは、白旗をあげる一歩手前でした。

 

 


ハーフが「カイシャ」を知った結果…

 

 

世の中には、コダモンが経験した何百倍もの過酷な状況、または理不尽な環境で働いている人が、大勢います。

 

 

自分が勤めていた企業は決してブラックでは無かったし、上司にはとても恵まれていた。

 

 

はたから見れば、20時などに帰宅できている時点で、「全然忙しくも何ともないじゃん!」というツッコミをいただくかもしれません。

 

 

それでも、ドイツハーフにとってはもう限界でした。

 

 

自分のキャパシティが「もう限界」と言っている。

 

 

そのキャパシティとは…。

 

 

「ハーフが『カイシャ』に就職してみた」事に対するキャパシティです。

 

 

「モノは試しだ!」という勢いで入社してみた、この一部上場の大手のカイシャ。

 

 

そこでの激務にのまれて、周りの社員と同じようにエンドレスで残業する一歩手前まで来てしまった自分。

 

 

この辺りで、一気にハンドブレーキを引く必要があったのです。

 

 

 

「ドイツの大学を卒業した自分は、日本のカイシャでサラリーマンが務まるのか?」

 

 

 

「海外で10年以上生活してきた自分は、日本のカイシャ組織で仕事ができるのか?」

 

 

 

その答えを、ここまで働いてみて、しっかりと確認できた。

 

 

もう、十分だったのです。

 

 

そして…。

 

 

 

やっぱり無理

 

 

 

これが答え。

 

 

日本の顧客を相手に営業として働くこと。それは、自分の想像をはるかに超えた「自己犠牲」が必要とされるものでした。

 

 

自分の前任者も、上司のハトリさんも、尊敬するシノハラさんも。

 

 

みんなとてもいい人なのだけれど、そこにはとてつもない「自己犠牲」がありました。

 

 

 

毎日残業して…。

 

 

 

平日は家族と一緒に晩御飯を食べることもなく…。

 

 

 

社内と社外の業務と納期対応に毎日ストレスまみれで働きながら…。

 

 

 

最終的には人生の半分以上が「カイシャの時間」。

 

 

 

…。

 

 

マジで無理です。

 

 

いつまでもいつまでも顧客対応や資料作り、ムダ会議に追われながら…。定時では決して帰れない仕事量の中でハムスターみたいに延々とカラカラカラカラしてる。

 

 

社内を見渡せば、みんな同じように血眼で働いている。

 

 

その姿は、かわいそうなくらい「カイシャ」に搾取されています。

 

 

まさに「社畜」というコワイ言葉が当てはまってしまう。

 

 

「ワーク」だらけの生活には、人生における「バランス」も何も存在していません。

 

 

 

ワークライフバランスは完全に崩壊している

 

 

 

日系企業に勤めて、日本的な働き方をすること。

 

 

そこには、超えてはならない一線が確実に存在し、それが同時に、自分の、ドイツハーフの「キャパシティ」の限界でした。

 

 

あのまま続けていたら…。今頃どうなっていたことやら。

 

 

ハトリさんやシノハラさんのように、残業マスターになって「カイシャに尽くす」ために思考停止していたかもしれません。

 

 

しかし…。

 

 

コダモンがそうならなかったのは、とある救いの手がさし伸ばされたからなのでした…。