『出世をしない』という選択肢 - 管理職にならない会社員が1番幸せ?

中間管理職の数が異常に多い日本企業。誰もが仕事のストレスと戦う毎日らしいけど、もしかして『ヒラ社員』を続けた方が人生豊かになるんじゃないの?



『万年ヒラ社員』で勝ち組?

 

 

ピラミッド型に構成されている企業組織。

 

 

係長、課長、部長、役員…と、年功序列によって段階的な出世先が存在する。会社員として働く上では、キャリアを積んで役職の階段をどんどん上っていくことが一般的に『理想像』とされています。

 

 

たくさんの社員が働きアリのようにあくせく働くその中では、トップに位置する社長以下、中~上層部に存在する役職者の人数も限られています。

 

 

いくらエスカレーター式に昇級できる日系企業であっても、要所に就く役職者の人数に制限があるうちは定年までヒラ社員を続ける人もたくさん存在するのです。

 

 

2004年当時によると、いわゆる管理職と呼ばれる人は約340万人で、全体に占める割合としてはおよそ10%です。

(高橋和子、SSM調査における管理的職業に関する一考察、『広義の管理職』を対象)

 

 

この数字に多少の増減を加味しても、社会人のおよそ90%が何の役職にも就いていない『ヒラ社員』だということになります。

 

 

街行くサラリーマンやOLの、そのほとんどが『課長』や『部長』などの肩書を持たない人たち。定年まで大きな出世がない人もたくさんいます。

 

 

でも、それって全然ダメじゃないのです。

 

 

むしろ、管理職じゃない方が幸せかもしれないということを、みなさんは考えたことありますか?

 

 


1. 管理職は勝ち組?

 

 

まず、「役職者は勝ち組か?」という質問に対する答えですが…。

 

 

給与の面だけを見れば『勝ち組』です

 

 

残業手当がつかなくなる役職者の人たちは、係長などになりたての頃は残業代の分だけ年収が下がる傾向もありますが、その後のキャリアを考察すると総じて年収アップにつながります。

 

 

年収を上げるには出世が一番とも言われますが、厚生労働省の調査結果を見てもわかる通り、役職別の賃金は男性では部長級の月給65万5,000円を筆頭に、課長級が52万6,000円、係長級が40万1,000円となっています。(厚生労働省: 賃金構造基本統計調査)

 

 

20~24歳の男性の非役職者の賃金が約21万5,000円なので、いわゆる若者の『平社員』や『ヒラ』などとの差は歴然です。

 

 

仮に、22歳で月給22万円のヒラ社員が年1,5%の昇給を受け続けたとしても、40歳で受け取る月収は約28万7,600円です。残業代などを加味しても、係長級にすらおよびません。

 

 

どんな社員でも年功序列の恩恵で昇給がありますが、ボーナスや退職金なども合わせると、やはり役職者と比べた時の生涯年収の差額はかなり大きいです。

 

 

そのため、給与の面から言えば、役職の階段を上ることで『勝ち組』の仲間入りとなります。

 

 

しかし…これはあくまでもお金にこだわった時の話。

 

 

それ以外に関して言えば、出世をした管理職の人たちが『勝ち組』とは限りません。

 

 

そもそも管理職とはどういった人を指すのでしょうか? 

 

 

「管理職とは、その制度としての意味は, 昇進レースで労働者のやる気を生み出すものである。しかし、管理職のもともとの意味は人を管理・監督することを職務とする、使用者側に近い労働者である」(参照元: 数字で見る管理職像の変化)

 

 

管理職の人たちの仕事には『管理・監督する』ということがあります。 各課・部署の責任者として、部下たちがスムーズに仕事を行えるように監督しながら人事も行うこと。

 

 

カンタンに言えば、ヒラ社員だった頃の仕事にプラスして部署の面倒を見るという業務が増えます。

 

 

部下の技量を見ながら、その仕事配分や就業態度などにいたるまで、色々な事項を考慮して管理・監督する必要があるのです。

 

 

部下が定時で帰宅できるように調整するのも管理職の仕事なのですが…残念ながら今の日本では機能していない。

 

 

役職者が部下の仕事量をマネジメントできないので、社内の残業がいつまでたっても無くならないのです。日本の残業がなくならない背景には、社内の調整や納期に追われる管理職たちの『余裕のなさ』がハッキリ現れています。

 

 

また同時に、一定の権限を与えられる管理職は社内の重要なポストにいるため、会議や各種報告に追われることになります。

 

 

そのため、残業前提で部署をまわそうとする『ダメ管理職』は、それだけで切羽詰まった状況にいることがわかります。

 

 

「給料分の仕事しかしたくない!」

 

 

「手当が出ないなら残業したくない!」

 

 

そのような『当然の考え』で働く部下とは裏腹に、担当部署の仕事を滞りなく果たすための責任を持つ管理職たちは必死なわけです。

 

 

ヒラ社員であるうちは、上から降ってくる仕事を適宜にこなしていればそれでいい。しかし、これが管理職となるとその責任を問われることになり、追加のプレッシャーがストレスとなる。

 

 

日本における管理職たちが勝ち組であるかどうかは、その仕事のストレスを考えると一概には言えないのです。

 

 


2. ワークライフバランス

 

 

お金以外にも、「地位や名誉が欲しい!」とか「世間体を良くしたい!」と考えて管理職を目指す人はいるでしょう。

 

 

または、「裁量のある仕事を受けて成長したい…!」そのように考えて、どんどんキャリアを重ねることが『生きがい』と感じる人もいるかもしれません。出世競争の中で『勝者』となることに悦びを感じる人。

 

 

それらは悪い事ではなく、むしろそのような人たちのおかげで企業組織が成り立っています。

 

 

上から目線で嫌われ者の上司も大勢いますが、それでも企業にとっては利益を生み出すために必要不可欠なスキルを持つ役職者たちなのです。

 

 

しかし…。そんな管理職たちの生活は『ワーク』が先行しがち。

 

 

定時以降になってからようやく自分の仕事にとりかかる上司

 

 

休日にも仕事をしてメールを部下に送る上司

 

 

日系の大手に就職していた当時、そのようなオーバーワーク状態の管理職や、プライベートを犠牲にする働き方をたくさん見てきました。

 

 

はたから見ると、そのような状態はいくら役職手当をもらっても割に合わないほど過酷に思えた。

 

 

お金だけが目的でないにしろ、当時目にした上司たちの働き方は確実に心身をすり減らすもの。

 

 

ワークライフバランスなど無い働き方です

 

 

そんな上司のもとで働くことにより、「管理職になりたくない」と考えてしまう若者は多いし、実際にそういう会話が当時の同僚の間でもありました。

 

 

『責任が重くなる』『ストレスが増加する』という避けられない事実を見せつけられ、出世を拒否する人もいることでしょう。

 

 

『責任がイヤ』『趣味を優先』という今どきの柔軟な思考をもった社員も大勢いる。

 

 

ワークライフバランスを守るために出世しないという選択肢は、確実に存在するのです。

 

 


3. ドイツの『ヒラ社員』

 

 

欧米諸国の企業組織には、日系の企業によく見られるようなムダな中間管理職が大勢いることがありません。

 

 

実力主義の世界なので、本当に有能な人材だけが管理職ポジションへとプロモーションされるからです。年功序列のシステムも無く、給与や昇級の交渉に臨むだけの成果とスキルを持ち合わせた人だけが、その恩恵に授かる事ができるのです。

 

 

ドイツなどでも、いわゆる役職者になることは狭き門となっています。

 

 

そのため、エンジニエアにしろ営業にしろ、定年間際になっても裁量の大きくない仕事をコツコツとこなしている人がたくさんいます。

 

 

そんな彼ら/彼女らは、「自分は出世競争に負けた…」などと思わせる様子がまったくない。

 

 

自分がこれまで培った経験とノウハウに則って、最短で成果を上げる仕事に特化して働いています。

 

 

そんな彼ら/彼女らが年下上司のもとで働くこともドイツでは当たり前。

 

 

MBAなどの肩書と優秀な職歴をひっさげて入社してくる20代後半の若い転職者が、入社15年のベテラン社員を部下に持つ事だってあります。

 

 

 

 

しかし、ドイツ人にとってはそのような状況もいたって普通。新陳代謝が良い仕事場において、『世間体』などを気にする風潮もありません。

 

 

そして何よりも…。

 

 

ドイツのヒラ社員はとても幸せそうに仕事をしている

 

 

ドイツでドイツ企業に転職したら、その事実に1番ビックリしました。

 

 

社内のことを知り尽くした40代〜50代のベテラン勢は、朝早くに出勤して仕事を適宜に終わらせると、夕方4時にはいそいそと帰宅します。家に帰ってからの庭いじりや余暇のスポーツ、友人と飲みに行くなど、みんな仕事以外にやりたい事がいくらでもあるからです。

 

 

とても若々しく、イキイキと働くドイツのオジサンとオバサン社員たち。

 

 

50代のヒラ社員でも、ベンツに乗って出社したり。会社では自分に与えられた仕事だけを黙々とこなして、コツコツとお金をためて…。企業勤めとは別の部分の、自分のやりたい事や欲しい物に、彼らは幸せに暮らすための価値を見出しているのです。

 

 

そうやって『ワーク』だけではなく『ライフ』をさらに充実させることで、今と将来を楽しく生きるために、ドイツ人は働いています。

 

 

管理職ほどの仕事のプレッシャーとストレスがないことを逆手にとって、仕事以外の時間に全力を注ぐのがドイツのヒラ社員たちです。

 

 

後にも先にも結果のみが求められる成果主義のドイツ企業においては、管理職レベルの従業員たちのプレッシャーはとても大きいです。

 

 

そのため、残業がほぼ無いドイツにおいては、ヒラ社員が『勝ち組』とも言えるのです。

 

 


4. 管理職にならない会社員が1番幸せ?

 

 

話を日本に戻します。

 

 

日系企業に勤めながらワークライフバランスを守るために『出世をしない』という選択肢は、果たして幸せをもたらすのでしょうか?

 

 

その答えは、2パターンにわかれます。

 

 

  

「管理職にならない方が幸せ?」に対する答えがYESの人:

 

 

 

「管理職にならない方が幸せ?」に対する答えがNOの人:

 

 

 

管理職にならない方が幸せかどうかは、その個人の人生に対する価値観によって変わります。

 

 

ただ一つだけハッキリ言えることは、今の日本の社会の変遷を見ていると『万年ヒラ社員は大いにアリ』だということ。

 

 

成果主義ではなく年功序列で組織されている日系企業においては、「成果を出した人に高い給与を与えてもっと頑張ってもらおう!」というシステムにはなっていません。昇進の対象となってバリバリとキャリアを築くにあたっては、地道にコツコツと昇級の階段を上っていかなければならないのです。

 

 

人間関係を耐えに耐えて、大きなミスを犯さないようにしながら徐々に徐々に出世の恩恵に授かる管理職たち。それらは必ずストレスと隣り合わせです。

 

 

 

多くのカイシャは「生活できるレベルの給与で定年まで雇うから辞めないでね」というスタンスで運営されていて、いわゆる終身雇用の名残がまだあります。

 

 

そのため、必ずしも上の役職を目指さなくとも、各々の専門性を伸ばすことを通して、ヒラ社員たちのカイシャにおける『存在意義の確保』はいくらでもできます。

  

 

 

 

管理職に就くという事は、その責任から来るプレッシャーと追加業務のストレスと戦うことになります。

 

 

そのストレスはとにかく大きいし、心身を消耗する毎日で身体を壊す人だっています。自分を追い込みすぎて『継続して働くことができない』ほど精神に支障をきたしてしまったケースもある。

 

 

そこまでカイシャに尽くして管理職を全うするだけの対価が、果たして『カイシャの給料』にあるのかどうか?

 

 

『生活できるだけの給与』は、ヒラ社員を続けるだけで十分まかなえるのです。

 

 

それを受け取っていれば、自分自身を犠牲にしてまでカイシャ奉公して出世する必要はない。

 

 

管理職にならない選択肢を選ぶことによりプライベートの充実を図ろうとすることは、決しておかしな話ではありません。

 

 

40代…50代になるにつれて、周りの出世した同期たちとのお給料の乖離はどんどん大きくなるでしょう。それでも、ワークまみれでワイフの無い人生を送るより、心身ともに余裕のある『万年ヒラ社員』の方が賢い選択のようにも見える。

 

 

いやむしろ、出世してカイシャ一辺倒の人生を送るくらいならば…。

 

 

『出世をしない』という選択肢の方が、正しいのです。

 

 

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