ハーフが会社に就職してみた_第17話_ドイツ出向

法人営業で心身ともに疲れ切ってしまったドイツハーフがついにドイツへ出向。日本のカイシャ生活からの脱却がこれからはじまるが…。

辞めようと思ってたらドイツ出向が決まった

 

 

コダモンです。 

 

 

ハーフであるコダモンが、日本のカイシャに就職してみた話。  

 

 

第17話:カイシャ辞める寸前だったけどドイツ出向が決まってみた。

 

 


 

 

営業として、対応がひときわ難しい「日本のお客さん」を相手に悪戦苦闘した、ドイツハーフ。

 

 

たくさんのプロジェクトを掛け持ちして、どんな些細な事にでも「営業」として関わる必要があった。まさに「お客さんにベッタリ」という表現がピッタリ。時には、幼稚園児を相手にしているのかと思うほど、どうでもいい要件でも依頼が来たり。

 

 

そのような環境下で「仕事」はいくらでもあるし、終わりは見えませんでした。

 

 

納期に追われながら、ただひたすら目の前の仕事をこなす日々の繰り返し。

 

 

前任者の同僚の「働き方」をそのまま継承した結果、コダモンにもたくさんの残業が待っていました。

 

 

いくら残業しても、時間が足りない現実。

 

 

自分が担当を引き継いでから、いろんな所で仕事がパンクする事態もありました。

 

 

いや…。周りの同僚のように「深夜まで残業」とかしていれば、支障もなく仕事をまわせていたのかな…。

 

 

それでも、海外が長かったハーフはそれができませんでした。

 

 

「自分のプライベートの時間を全部犠牲にしてまでカイシャにしがみつきたくない…!」 

 

 

そんな"健全"な想いが、自分の中でまだ生きていたから。

 

 

それがなければ、周りの人間とその働き方に同化していました。

 

 

残業地獄とストレスまみれの「当たり前のカイシャ生活」から、抜け出せなくなっていた事でしょう。

 

 

それだけは阻止したかった。

 

 

ただ、現実問題として…。

 

 

仕事は落ち着くどころか、どんどん増えていく。

 

 

 

「コダモン、お前はもっとカイシャの中身と仕組みを知れ!」

 

 

そのようなお偉いさんの言葉の通り始まった、営業部での仕事と「法人営業」。

 

 

営業部に入った当初に対応していたドイツ系企業とは、まったく別次元のストレスが待ち構えていました。

 

 

実際の業務を通して、納期に追われながら、社内外の調整と折衝業務に明け暮れたドイツハーフ。

 

 

イヤというほど「日本のサラリーマン」を経験しました。

 

 

そして…。たった半年ほどで嫌になってしまった。

 

 

このように書くと…。

 

 

 

「お前は忍耐がない!」

 

 

 

「仕事は楽しい事ばかりじゃない!」

 

 

 

「サラリーマンなんだから当然だ!」

 

 

 

…みたいな声も聞こえてきそうですが、正直どうでもいい。

 

 

今でも声を大にして言えますが、当時はマジで単純に「嫌になりました」。

 

 

…。

 

 

「日本的」な考え方。そして、日本式の働き方。

 

 

それに、最後までついていけなかった、わたくしコダモン。

 

 

顧客との「関係性」を意識するあまり、自分の仕事の範疇を超える作業がたくさん発生して、それを怠ると、「根性が足りない」などという非常に曖昧な指摘が来たりする。

 

 

また、自分が営業としてこなすべき「仕事の定義」は、あって無いようなもの。ムダ仕事を減らそうと改善案を提案しても…。「これまでもそうだったから」とか「みんなやってきたから」みたいな理由で、変わる事はない。

 

 

ワケのわからないまま自分の所に仕事が集中するような状態を、たくさん経験しました。

 

 

その仕事量は、フタを開けてみれば、定時内に終わらせるには到底不可能な量。

 

 

それこそスーパーマンみたいな働き方が求められます。

 

 

さらに、社内のどうでもいい雑務なども加わって…。

 

 

毎日の残業の中で、「より良いサービスを提供しよう」などというポジティブな考えは、微塵も生まれませんでした。

 

 

「やりがい」など、とっくに感じられない。

 

 

単純に、そこに存在している仕事を一つ、また一つと順々にこなすだけ。

 

 

自分が意識していなくても、「仕事をさせられている」という負の感覚が、いつしか芽生えていました。

 

 

そのような状況で、一気に襲い掛かってきたカイシャでのストレス。

 

 

「これが『ストレス大国ニッポン』の現実か…」

 

 

本当に、まざまざと見せつけられました。

 

 

自分は既にこれまでにない頻度で残業しているのに、周りを見渡せば…。それ以上のペースで残業をしてい人が大勢いる。

 

 

改めて、その「残業の実態」にもドン引き。

 

 

ドイツハーフは、いろんな意味でもう匙を投げる一歩手前です。

 

 

社内でも、はたから見たら、日を追うごとにゲンナリしていく自分がいた事でしょう。

 

 

毎週の営業部内での「朝会」で業務報告をする自分にも、日増しに余裕がなくなっていった。

 

 

そんな矢先です…。

 

 

この営業部での経験をいかして、最終的には「ドイツで仕事をしてもらう」という自分のキャリアパス。

 

 

カイシャの役員も期待していた、ドイツハーフの最終的な使い道。

 

 

その話が、急に空から降ってきたのです。

 

 


ドイツに行くことになった

 

 

「もうこのまま続けるのは無理」

 

 

コダモンは、周りには漏らさずとも、そう思いながらギリギリで持ちこたえていました。

 

 

それは精神的に病んでいたわけでは無く、ただ単純に、これ以上「終わりが見えない働き方」を続けたくなかったから。

 

 

いや…。心身に支障をきたすのも、時間の問題だったのかも?

 

 

それはともかく、自分の中ではもう限界。

 

 

「信頼する上司のシノハラさんに、その事を伝えなければ…」 

 

 

そうやって悶々と葛藤している時に、こちらが予想だにしていなかった事態となりました。

 

 

それは…。

 

 

 

コダモンのドイツ行きが決定

 

 

 

という通達です。

 

 

 

「え…」

 

 

 

本当に予想していないタイミングだったので、面食らうドイツハーフ。

 

 

どうやら、本当にあと数か月後には、ドイツへと出向する話が進んでいるらしい。

 

 

 

「…マジで!?」

 

 

 

最初は驚きの方が大きかったのですが、すぐに「喜び」が勝りました。

 

 

 

「この苦しい状況からもうすぐ開放される!」

 

 

 

それが真っ先に思い浮かんだ。

 

 

小躍りするとは、まさにこの事 (笑)

 

 

部長とシノハラさんに呼び出されて…。聞くところによると、欧州のビジネス展開も過渡期で、どうやら人員を必要としている。そして、もともと「ドイツでの拡販」が主目的で中途入社した自分のタスクを、とうとう実行に移す時が来た…とのこと。

 

 

コダモンの「出来上がり具合」も、およそ2年にわたる本社での業務を通して、一定の経験を積めた。そのドイツハーフを、そろそろ投入してもいい頃ではないか…と。

 

 

営業部へ配属となってから、その関係は遠ざかっていた役員レベルのお偉いさん達。彼らが今回の決断を下したようです。

 

 

あとほんの数か月後にはドイツへと移住。

 

 

そして、そこで必要とされる業務は、自分の元来の強みを存分にいかせる、ドイツ語を駆使しての営業活動。

 

 

 

「よっしゃ!」

 

 

 

思わず小さくガッツポーズが出ます。

 

 

しかし…。

 

 

机をはさんで向かい側に座っていた部長さんとシノハラさんは、あまり浮かない顔をしていました。

 

 


コダモンは「一人前の会社員」か?

 

 

部長さんとシノハラさんに呼び出されて、出向を告げられたドイツハーフ。

 

 

会議室で3者面談でもしているかのような雰囲気の中、彼らはお世辞にも喜んでいるようには見えない。

 

 

…。

 

 

営業部の一員として、また自分たちの部下として。特にシノハラさんは、これまで親身になってコダモンの面倒を見てきた。

 

 

自分の部下が「難しい顧客」の担当となって日々消耗している中でも、つかず離れずの距離感を保ちながら、いろんな局面でサポートもしてきた。

 

 

慣れない「法人営業」に苦戦するドイツハーフは毎日がてんてこ舞い。でも、シノハラさんは、いつもちゃんと「見て」くれていた。

 

 

日々の業務の中で、それはとても顕著でした。

 

 

シノハラさんの目からみて「ギリギリ些細な問題」には、彼はまったく関与する素振りを見せない。コダモンが大慌てしている中でも、平静を装ってドッシリかまえている。

 

 

彼が「こいつなら1人でやれる」と判断すると、それを一任させる。部下の経験の度合いに合わせて、目の前のタスクに取り掛からせる。

 

 

まさに絶妙なさじ加減。

 

 

また一転して、「マジでヤバくなりそうな問題」を嗅ぎつけると…。シノハラさんはいち早く反応して、適宜にアドバイスをくれて、解決へと導いてくれた。

 

 

そのような部下の育成スキルにまで長けた、頼りになる上司。

 

 

そして、この道20年以上の、ベテラン営業マン。

 

 

そんなシノハラさんの目から見ると…。

 

 

 

コダモンの仕事ぶりは、まだ「完全に一人で任せられるレベル」では無かったのです。

 

 

 

そのことを、淡々と、諭すように語ってくれました。

 

 

おエライさんの決定なので、今回の出向をキャンセルする事ができませんが…。

 

 

 

「このドイツハーフを送り出す事は時期尚早ではないか?」

 

 

 

上司である彼は、そう思っていたのです。

 

 

そして、部下である自分を、心配してくれていた。

 

 

…。

 

 

確かに、思い当たるフシはあります。

 

 

そもそも、直属の上司のハトリさんに「お前は担当としての意識が足りない」と言われてしまったのも、つい数か月前の出来事です。(16話参照)

 

 

仕事が潤滑にいかない部分が多い事も…。情けないけど、自覚がありました。

 

 

自分なりにベストは尽くしてみたけど、全てのオープンタスクをクリアにできていたわけでもない。

 

 

周りのように深夜まで残業していなかった自分の働き方ではどこかで必ず漏れが生じていたからです。

 

 

日々の業務の様々な局面で、上司のハトリさんやシノハラさんにまだ頼ってしまうシチュエーションも、多々あった。

 

 

そのような状況の中で…。

 

 

自分が「やれること」「やるべきこと」がまだ残っているのではないか…?

 

 

それは、重々承知していたのです。

 

 

自分はまだ、全てを出し切るつもりで、全身全霊で「顧客対応」をこなしていないのではないか?

 

 

今の働きぶりでは、不完全燃焼なのではないか…?

 

 

それも、否定はできなかった。

 

 

実際に、同じ部署にいる「コダモンの前任者」であった同僚と比べても、明確でした。その彼は…。

 

 

家族をないがしろにして…。

 

 

毎日残業して…。

 

 

顧客にベットリな対応をしてはじめて、うまく仕事をまわせていた。

 

 

かたや、その仕事を引き継いだドイツハーフ。できるだけその業務を継承して毎日残業はするものの、遅くても21時とかには帰宅していた…。

 

 

自分がもっとも嫌悪感を抱く「ワークライフバランスを無視する働き方」。それを、もう少し続けてみるべきではなかったのか…?

 

 

シノハラさんが親身に語ってくれた時、そんな事も一瞬だけ頭によぎりました。

 

 

…。

 

 

 

「それでもドイツに行きたい!」

 

 

 

声にこそ出しませんでしたが、この時はもうそれしか考えていませんでした (笑)

 

 

自分の心の声に耳をかたむけた結果です。

 

 

 

「今のカイシャ生活が嫌になった」

 

 

 

それは、単純で行き当たりばったりのように聞こえるけど…。切実な内からの声。

 

 

この事実は変わらないし、同じ環境に身を置き続けていても、仕事を継続できなかったでしょう。半年以上耐えてみたけど…。やっぱり無理。

 

 

シノハラさんの言葉は身に染みたし、自分がこれからさらに苦労する事があるかもしれない。

 

 

それでも、自分に求められていた、カイシャへの入社のキッカケとなった「ドイツから営業活動をする」というタスク。

 

 

自分が中途採用となった「ドイツ語スキル」という強みをいかせる業務。

 

 

その仕事が、背景とタイミングはどうであれ…。今この時点で自分にまわってきたのだ。

 

 

ただそれだけのこと。

 

 

そのように割り切りました。

 

 

そして…。

 

 

しっかり丁寧に、「自分は準備ができています」という返答をした。

 

 

 

こうして、およそ2年に及んだ本社での「サラリーマン生活」に、いったん終止符が打たれる事になったのです。

 

 


ドイツ行きの準備が始まった

 

 

「ドイツ行き」が決まった後の数か月は、あっという間でした。

 

 

お偉いさんにも呼び出され、自分への将来的なタスクや期待値などの話があり…。そこからは、本当に全てが早かった。

 

 

大手企業だったこともあり、駐在員の派遣や対応には慣れたもので、テンプレのようなあっさりした説明を受けたのを覚えています。

 

 

人事から諸々の資料提供と説明があったり、必要書類を準備したり、各所への届け出をしたりと、通常の業務に加えて「やること」が増えたので、この期間は本当にてんやわんやでした。

 

 

それでも、「自分はもうすぐドイツへ行くのだ…」と頭を切り替えることで、ストレスが和らいだ。

 

 

仕事は相変わらず目が回るほど忙しかったけど、「もう少しの辛抱だ」と思うことで、頑張れたのです。

 

 

ただ、冷静に考えてみると…。この時点で、もうすでに末期症状は始まっていたのですよね。  

 

 

 

そこに「終わり」が見えるから頑張れる。

 

  

 

頑張った先に「脱却」の出口があるから耐えられる。

 

 

  

そのような働き方は、そもそもするべきではありません。

 

 

自分が継続的に組織に貢献できる状態にはいないし、そのように「嫌々働いている」時点で、業務効率が良いはずもない。

 

 

他人事のようにも聞こえますが…。

 

 

この時すでに、コダモンの「日系でのカイシャ生活の終焉」の足音は、ゆっくりと近づいてきていたのでした。

 

 

…。

 

 

何はともあれ、今の自分の目の前のゴールは「ドイツ行き」です。

 

 

そして、それまでの数か月を、しっかりと乗り切る必要がある。

 

 

…。

 

 

社内と社外の大事な仕事として、担当していた業務を同僚に引き継ぐ作業がありました。

 

 

自分もつい半年ちょっと前に引き継いだばかりなのに…。もうさっそく次の担当者へと引継ぎ。

 

 

まずは顧客を回る必要がある。

 

 

半年前ほどは前任者の後にくっついて「あいさつ回り」をしていた自分ですが、この時は後任者を引き連れてのあいさつ回り。 

 

 

なんとも変な気分です。

 

 

業務を引継いだ当初は、右も左もわからなかった顧客の敷地内や担当部署なども、今となっては自分が先導してその中身を紹介している…。

 

 

お客さんにあいさつ回りをしていても、

 

 

「あ…。そういえばこの人に怒鳴られたなぁ」

 

 

とか、

 

 

「この人はクレームで大変な時に助けてくれたなぁ」

 

 

とか、色んな思い出も蘇る。たった半年そこそこの短い期間だったのに。

 

 

その短い期間の中で自分が身につけた営業としての知識と経験は、今でも役に立っています。それほど、この当時の激務の期間は、大変だったけど貴重でした。

 

 

…。

 

 

いろんな顧客の所へ赴いて、ドイツハーフが業務から離れる事を淡々と説明してまわりました。

 

 

カイシャを辞めるわけでは無く、海外へ赴任となるため、先方は理解を示してくれました。遠隔ながら、何かあればサポートする事も、一応伝える。

 

 

「えーコダモンさん変わっちゃうの?」

 

 

…と残念がる人も。そのような温かいコトバをかけてもらうと、自分なりに頑張ってみた結果が残せたのかな…と、なんとなく実感があります。

 

 

 …。

 

 

最後まで「日本のサラリーマン」になりきれず、いわゆる「日本的」な働き方に傾倒できなかった、ドイツハーフ。

 

 

中途で入社したこのカイシャでの本社勤務のおよそ2年間、なんとか自分を見失わずに乗り切ることができました。

 

 

有給休暇もロクに取らず、休日にもメールをチェックして、毎日遅くまで残業していた同僚たち。

 

 

彼らに倣うようにドップリと「仕事」に浸かっていれば、上司も顧客も、もっともっと満足していた事でしょう。

 

 

 

「始発で帰宅してシャワーだけ浴びて、また出勤」

 

 

 

「有給休暇が30日以上たまっている」

 

 

 

「夜9時に帰宅してもやることがない」

 

 

 

そのような働き方と思考回路で、悲しいほど「カイシャ」に尽くしていた上司と同僚たち。

 

 

そして、そんな彼らは…。今この瞬間も、どこかで身を粉にして働いているのです。

 

 

自分の時間、家族や友人との時間を犠牲にしながら。

 

 

…。

 

 

ドイツハーフは、ここでいったん離脱です。

 

 

カイシャ生活の最終章が始まろうとしています…。