ハーフが会社に就職してみた_第15話_営業やってみた(part3)

ゴリゴリの日経企業に勤めるドイツハーフが法人営業で「日本式」に仕事してみたら消耗した。

営業部での仕事で消耗してみた

 

 

コダモンです。

 

 

ハーフであるコダモンが、日本のカイシャに就職してみた話。  

 

 

第15話:営業部の仕事で心身を消耗してみた。

 

 


 

 

ドイツ顧客向けの営業をしている時、カイシャ生活は充実していました。

 

 

技術の人と一緒にドイツへ出張する機会もあったし、日々の業務の中では単純に語学力を活かすことができたので、自分の長所が有効活用されている実感もあった。

 

 

しかし…。

 

 

それは単なる「準備運動」に過ぎなかったのです。

 

 

「コダモン、お前はもっとカイシャの中身と仕組みを知れ!」

 

 

そのようなお偉いさんのお達しのもと、転属となった営業部では、国内の、いわゆる「法人営業」を経験することが最終的な目的だったのです。

 

 

日本の顧客と「日本の働き方」を経験することが、営業マンとしてのベース作りになる。そして、カイシャの中での明確な立ち位置の確保にもつながる。

 

 

それを1番学べるのが「法人営業」だと…。

 

 

そして、それを通して営業のベースが出来上がったら、ドイツへ出向して現地から開拓と拡販営業を行う…。というシナリオです。

 

 

カイシャ側の思惑として、「本社の文化と働き方」を知ったうえで、海外から仕事をして欲しかった。

 

 

その筋書きの通り、ドイツハーフは営業部の配属により日本の働き方を、たくさん経験しました。

 

 

そして、最終課題とも言える「日本のお客さんへの営業」。

 

 

これが、今まさに始まろうとしているのです…。

 

 

日本の顧客を担当することになった

 

 

営業部では、毎週のように「朝会」がありました。

 

 

そこは、部長以下の全ての部員が、自分が担当する顧客とプロジェクトの進捗具合や受注状況、出張報告からクレームなども含めた、週間報告をする場。

 

 

どの営業マン(/ウーマン)も、その朝会を通して、他の同僚の仕事ぶりや、自分の担当以外の顧客動向なども知ることができたのです。

 

 

ドイツハーフは、朝会での同僚の報告を横で聞いているたびに…。

 

 

 

「うわーキツそうだなぁ…」

 

 

 

と思っていた。

 

 

…。

 

 

年度も変わり数か月が経った、とある朝会での出来事です。

 

 

この時のコダモンは、入社およそ1年半。営業部に配属となって既に1年が経とうとしていました。

 

 

例の如く、週に1度のペースで行われている朝会に参加。

 

 

その流れには別段何の変哲も無く、いつも通りコダモン含めた下っ端の4名の業務報告から始まって、係長、課長、部長…と、各々の報告と通達事項が行われました。

 

 

すると、会の終了間際、急に雲行きが怪しくなりました。

 

 

「○○が担当していた例の顧客、そろそろ部内で担当を入れ替えようと思う」

 

 

部長が急にそんな事を言い出したのです。

 

 

いや、それが「急な話」に聞こえたのは、おそらくコダモンとその他数人だけ。

 

 

「担当顧客をローテーションする」などという重大事項は、いくら部長と言えどもその一存では決められません。3人の課長含め、各々の部下の裁量と仕事のキャパシティを考慮したうえで、事前に既に決断がなされていたはずです。

 

 

…。部長が続けます。

 

 

「○○は、もう長い事この顧客の担当で良い結果も残してくれた。そろそろバトンタッチだな…」と。

 

 

その同僚は、この変化が来ることを事前に知らされていたようで、朝会の中での急展開にも平然としています。

 

 

しかも、この顧客はけっこうな「虎の子」。営業の視点からは、売上規模などを考えるとあまり手放したくない中身です。それでも、もう既に調整がなされているせいか、このバトンタッチに関しては部署内で合意があったようでした。

 

 

 

「…という事で、コダモン。お前この顧客の担当やってみてくれ」

 

 

 

…。

 

 

 

「うぇっ!?」

 

 

 

ドイツハーフは、その場に凍り付いてしまいました。

 

 


ゴリゴリの日系企業のお客さん

 

 

自分が「本社の文化と働き方」を学ぶために、営業部へと配属になったこと。

 

 

そして、いつかは国内のお客さんを相手に営業活動をすることは、カイシャ側のシナリオ通り。予定通りでした。

 

 

それ自体は、こっちも事前に承知していた。

 

 

しかし…。

 

 

いざ「さぁ、やれ!」となってみると、マジで二の足を踏みました (笑)

 

 

朝会でいつも「ヤバい」のレッテルを貼られている、あのお客さんを担当…??

 

 

…。

 

 

部長からのお達しがあった時、その場の雰囲気は二分されていました。

 

 

部長以下、シノハラさんとハトリさん含めた上司たち。彼らは、コダモンの反応を試すような視線を、こちらに送ってきます。

 

 

そして、その他の同僚たち。彼ら/彼女らは、「うわーかわいそう…」という目線をこちらに送ってきます。

 

 

それもそのはず…。

 

 

このお客さんがゴリゴリの日系企業だったからです。

 

 

いや、日系企業であることは普通なのだけど、部署の中でも有名な、「ダメさ」が伝統的に残る顧客だったのです。

 

 

営業部の朝会で、これまで担当していた営業が毎週のように報告していた内容は、常々部署のなかでも「ヤバい」のレッテルを貼られていました。こちらの範疇を超えるような内容も、平気で丸投げするような…。社内の然るべきシステムもあってないような顧客。

 

 

これまで担当していた「前任者」も、長年ベッタリと付き合ってようやく顧客をコントロールできていた。

 

 

その同僚が、顧客の動きや考えまでを熟知して動いていたので、ビジネスも何とか回っているような状況だったのです。

 

 

それなのに…。配属1年足らずの自分に、しかもドイツハーフに…。

 

 

 

「これマジで大丈夫か…?」

 

 

 

他人事のように、一気に心配になってしまいました。

 

 

部長からビシッ!と名指して依頼された瞬間、頭の中をフル回転させて、色々考えた。

 

 

しかし…。残念ながら、コダモンに選択の余地はありません。

 

 

なぜなら、「日本のお客さんを担当すること」は、もう時間の問題だったからです。

 

 

将来的なキャリアパスへの布石と経験値として、国内で社内外の人と組織を巻き込んで営業活動をすることが求められていた。

 

 

どの案件、どの顧客の担当になるかは不明でしたが…。

 

 

ここへ来て「いや、このお客さんはやりたくありません」などと言える立場でもない。

 

 

…。

 

 

今回の決定がこのタイミングでなされた背景には、ある明確な理由がありました。自分でもうすうす感づいていた理由。

 

 

それは、これまで担当していたドイツ顧客案件が安定してしまったこと。

 

 

要するに…。

 

 

とてもサバサバしたドイツ顧客の相手がスムーズで、ドイツ語が母国語ということも手伝い、時間が経つにつれてコダモンの作業効率もどんどん上がった。そうしたら、しっかりと定時で帰れる日も増えて、尚且つ結果も伴っていた。

 

 

そして…。

 

 

 

「あいつはヒマになってきた」のレッテルを貼られてしまった

 

 

 

これが理由です。

 

 

シノハラさんやハトリさんから、「お前最近帰るの早いな?」とよく言われていた。

 

 

周りのみんながいつまでも残業している中、颯爽と定時に帰宅していくドイツハーフ。誰の目から見ても明らかなその働きぶりは、「そろそろ潮時」だと思われていたのかもしれません。

 

 

 

「あいつにそろそろ追加業務を与える時が来た」

 

 

 

…というわけですね。

 

 

そして…。運がいいのか悪いのか、その追加業務というのが、部署内でも有名な「ガッツリ日系の顧客」となったのです。

 

 

…。

 

 

定時に帰宅している社員に対して、あっさりと仕事を追加する日本のカイシャ。

 

 

その社員のポテンシャルを見込んでとか、そういうキレイごとでは済まされません。

 

 

「残業が当たり前の仕事量」を課す組織なのです。

 

 

どう考えても終業時間内に終わらないような業務量を抱える人が、たくさんいる。

 

 

 

「仕事なんだから仕方ない」

 

 

 

「周りもみんな残業している」

 

 

 

「足りない分は休日にも働いて…」

 

 

 

そのような考え方が社内に蔓延しているので、この組織体制の中で働いているうちは、抜け道が無いのです。

 

 

しかしながら、海外生活が長かったドイツハーフは、非常に強い疑問を感じました。

 

 

海外だったら、このような状況に対しては「NO!」を突き付けるだろうし、仮にこの追加業務を承諾しても、自分の契約見直しを図ったりすることでしょう。

 

 

しかし…。自分が勤めているのは年功序列と集団意識が支配する日本のカイシャ。

 

 

自分は、「ニホンノシャカイジン」。

 

 

…。

 

 

「コダモン、お前はもっとカイシャの中身と仕組みを知れ!」

 

 

このタスクをクリアした後には、ドイツへと赴いてビジネスの拡販を担うという「ゴール」も待っている。

 

 

自分の経験値のためと割り切って、営業部での第二章がスタートします…。

 

 


会社生活がヤバい意味で一変した

 

 

「ハーフが『カイシャ』に就職してみた」。その中身の真骨頂は、ここからスタートします。

 

 

周りからしたら「お気楽」な仕事ぶりを発揮していたドイツハーフは、ドップリと日本の営業を経験することになりました。

 

 

まずは文句を言わず、その業務を請け負ってみる。

 

 

…。

 

 

社内での業務の引継ぎと並行しながら、お客さんへのあいさつ回りがさっそく始まりました。

 

 

これまで担当していた同僚と同行する形で、先方の各部署へと訪問します。

 

 

ガッツリ伝統的な日本企業だった顧客側では、どこの誰に会ってもビックリされた。

 

 

 

「へぇー新しい営業さん? よろしくね」

 

 

 

と、気さくに対応してくれる人もいれば…。

 

 

 

「えっ…。こちらの方は…。日本語は大丈夫なんです…よね?」

 

 

 

と言って、コダモンと露骨に目を合わせない人も(笑)

 

 

そりゃそうですよね、いきなり「外国人」が担当営業になってしまっては…。

 

 

そして、このお客さんの中には、日本人以外の免疫が無い人が多そうでした。そもそも、仕事を遂行する上で、日本語以外を使わない人ばかり。こんなにグローバル化が進んでいる昨今なのに。

 

 

何はともあれ、その引継ぎ作業の中では、「これまでと何も変わらないので安心してください」みたいな間接的なメッセージを送りました。

 

 

話しているうちに「日本語がOK」ということが判明するので、引継ぎのあいさつ自体はスムーズにいったのですが…。それでも、なにぶんお互いが「ザ・日本のカイシャ」なので、ドイツハーフが絡むことにはどうしても違和感がある(らしい)。

 

 

そうは言っても、もうこの交代は正式に決まったものです。

 

 

後戻りはできないし、やるっきゃない。

 

 

これまで担当していた同僚は当分サポートにまわる形で、急に表舞台から消えるわけではないのですが、これまでこのお客さんと構築されてきた関係がベッタリだったので…。先方にも、一抹の不安はあるようでした。

 

 

「あいさつまわり」にくっついている外国人は珍しいし (笑)

 

 

それでも、引継ぎのあいさつが一通り済むと、業務が否応なしに発生していきます。

 

 

…。

 

 

その顧客案件は、ざっと何十にも及ぶ大規模なライナップでした。

 

 

売り上げ規模はプロジェクト毎にまちまちながら、どれもこれも営業が先頭に立って社内外の調整をしなければいけない、とても大変なもの。

 

 

見積もりや案件受注までの基本的なタスクから、技術と工場との折衝業務、クレームの対応、はたまたロジスティックなどの物流にいたるまで。

 

 

「ここまでやるか!?」と思うほど、「営業」が絡む業務範囲は多岐にわたるのでした。

 

 

それもこれも、これまで担当していた営業マンが、全てにおいて「お客様の対応」に明け暮れていたから。

 

 

それ自体は評価されるべきなのでしょうが…。ドイツ人視点から言わせてもらえば、明らかにセールスマンの業務の範疇外の仕事が多々あった。しかし、ここで対応を変えたら、「新しい担当になってから対応が悪くなった」という評価に代わります。

 

 

何しろ顧客の日系企業とは、これまでの前任者が相当ベットリな関係で仕事をしてきたのです。

 

 

売り上げに影響がでるような事態になれば、それは自分の評価へとつながる…。

 

 

そのようながんじがらめの状況で、とりあえず従来の「働き方」を踏襲することにしました。

 

 

すると…。

 

 

1日に各所からひっきりなしに何度も電話がかかってくるようになり…。

 

 

全ての細かいタスクに納期設定が行われて…。

 

 

週に1回は顧客へ出張するようになっていったのです。

 

 

そういえば、これまでの担当者は常にデスクから電話していた。そして、月に何度何度も出張していた…。

 

 

まさに、そのままの仕事量とタスクが、ドイツハーフに引き継がれたのです。

 

 

営業部に1年余り在籍していたこともあり、「右も左もわからない状況」ではなかったのですが…。それでも日本のお客さんを相手にすることに、次第に消耗していくのでした…。