ハーフがカイシャに就職してみた_第10話〜入社編(part4)〜

新入社員研修の後半。研修最後の課題が超難関。周りの同期たちと一緒に「カイシャ」をまざまざ知ることに…。

入社編part4 - 新人研修で「カイシャ」知った

 

 

コダモンです。 

  

 

ハーフであるコダモンが、日本のカイシャに就職してみた話。 

  

 

第10話は、新入社員研修の後編。悲喜こもごもな研修最終日。 

 

 

(前回の話はコチラ)

 

 

「社訓の唱和」という恐ろしい行事が毎朝行われていた、新人研修。

 

 

「班」で行動したり、「挨拶がなっていない!」などと言われたり。学校の延長のような環境を感じながら、研修は続きました。

 

 

カルチャーショック以上に、「日本のカイシャに入社したんだ…」という実感がふつふつと湧いてきて、何とも言えない気持ちになりました。

 

 

しかし、後戻りはできない。

 

 

研修担当の女性社員、カヤさんの主導で、新人研修は続きます。

 

 

新卒採用された新人たちに、まずは広く浅くベースとなる知識を与えようと、期間中の1か月でとにかく色んな研修というか講義が行われました。

 

 

カイシャの組織構成などの基本的なところから、製品・製造などに関わる部分、また知的財産やコンプライアンスにいたるまで。

 

 

専門分野も出身校もまったく違う50人の新人たちにとっては、そのどれもが新しい情報。みなしっかりメモを取りながら、講師たち(カイシャの上司たち)の話に聞き入っています……。

 

 

と書きたいところですが、彼らはついこの間まで自由方便な大学生。

 

 

ガンガン居眠りをしています(笑)

 

 

これには笑った。

 

 

というか、ちょっと「頼もしい」と思えましたね。

 

 

5班の班長だったコダモンは、後ろのほうに座っていたため、健やかな眠りにつく同僚たちの様子が丸見えでした。座りながら、急にコックリコックリと舟をこぎだす同僚たち。

 

 

そして、壇上で講義をするめいめいの部署の上司たちからは、さらに丸見え。

 

 

居眠りする新人たちは、ほぼ100 %バレています。

 

 

未来の上司になるかもしれない人の前で、堂々と?居眠り。

 

 

壇上に立つ上司たちの中には、見て見ぬふりをしてやり過ごす人もいれば……

 

 

「おいコラ。そこのキミ。キミだよ。ずいぶんと気持ちよさそうだね…!」とすごみながら注意する人も。

 

 

その都度みんな「ビクッ!」となって一旦は目を覚ますものの、それでもなかなか睡魔に勝てない同期もいます。

 

 

こうなると気が気でないのが、カヤさん。

 

 

なにしろこの新人たちは、カヤさんの指導のもと研修に参加しています。

 

 

「今年の新人たちは礼儀がなってない!」

 

 

「居眠りなぞしやがって!」

 

 

「いったいどうなってるんだ!」

 

 

このような怒りの矛先は、まず研修の先導者であるカヤさんにいきます。

 

 

これも日本のカイシャ独特の体制ですよねぇ……。いくら新人と言えど、彼らはもう大人。

 

 

居眠りしようが何しようが自己責任なのに

 

 

本来そうあるべきなのですが、「個」よりも「集団」を重んじる日本。また、「新人 = ひよっこ」という認識のせいで、彼らをまとめる人物にも責任が問われる。そして、まずカヤさんにとばっちりが行きます。

 

 

居眠りしている人に直接注意して、終わりにすればいいのに。

 

 

しかし、カヤさんには既にしっかりと通達(というか苦情)がまわっていました。

 

 

案の定、「居眠り事件」の日の解散前、カヤさんから檄が飛びます。

 

 

「みなさんは、もう大学の講義に参加しているのはありません! 立派な社会人なのですよ? いつまでも学生気分でいないで、ちゃんと意識と自覚をもって、研修に参加してください!」

 

 

うん。ごもっとも。

 

 

しかし、それでも居眠りさん達は増える一方でした。

 

 

いやー…。

 

 

コダモンもわかるんですよ。

 

 

ただっ広い研修室に終日缶詰めにされ、座って話を聞くだけの時間が長い

お昼ゴハンの後にはそれがピークとなり一気に眠くなる。

 

 

なんらかの作業をしていれば話は別ですが、なにしろずーっと座っているだけ…。

 

 

コダモンも何度がウトウトしかけましたが、そこには絶対に寝落ちしてはいけない事情がありました。

 

 

そう、「班長」です。

 

 

業を煮やしたカヤさんは、ある日、班長たちを集めてこう言っていたのです。

 

 

「班員がもし寝たら、しっかり起こしてやってください! 連帯責任も考えます。」

 

 

班員が寝たら班長にも責任アリ

 

 

そんなメッセージを無情にもつきつけられた班長たち。それからというもの、自分の周りに気を配ることに時間を費やし、そもそも講義にすら集中できない。

 

 

うーん……。

 

 

居眠りがダメなのはもっともなのですが、カイシャはもうちょっと「個」に任せるべき。

 

 

いくら新卒だと言っても、もう大人なのだから……。

 

 

管理する部署やチームの目標を達成したり、パフォーマンスを最大化することは、上司の立派な役割です。そして、上の者が部下の責任や部署全体、チーム全体の責任を取る。その精神も立派です。

 

 

新人研修の居眠りに関しても、「講義する上司たち」→「研修担当のカヤさん」→「班長たち」というように、改善を求める通達が流れてくることも、まぁ理解できます。

 

 

それでも、もう少し「個」に着目して、居眠りに関しても必要ならば「個別」に対処すべきではないかと。

 

 

これも、日本のカイシャの集団意識の強さと集団行動の美徳なのかな……。

 

 

コダモンは、その風土にまだまだ慣れないまま、研修も後半へと進みます。

 

 

 

新入社員研修の良かったところ

 

 

カルチャーショックから始まったカイシャでの新人研修ですが、ポジティブな要素もたくさんありましたよ。

 

 

カイシャの面子のためにも、ポジティブなところをご紹介。

 

 

まずはコレ。

 

 

全てががとても懇切丁寧

 

 

日本のカイシャ全般に当てはまることかもしれませんが、研修の段取りから講義内容、またスケジュール調整まで、全てがとても懇切丁寧でした。

 

 

日本は本当にサービス精神が旺盛です。良い意味で。

 

 

「研修」という名目上、まだまだ半人前な扱いを受ける新人たち。それを踏まえても、スケジュール自体は非常に良くプランされた内容でした。後々行った工場見学なども、移動から何から何まで、とてもスムーズでしたし。

 

 

大企業の利点なのかな……。うん、これは良かった。

 

 

研修への導入と運営は◎。

 

 

次に印象深かったのが、外部から人を招いた講義

 

 

ビジネス研修などという名目で、新卒向けに行われた、スクール的な講義です。

 

 

これも、企業規模が大きかったゆえかもしれませんが、単純におもしろかった。

 

 

延々と座りながら続く座学とは違い、チーム毎でタスクに取り組んだり、ディスカッションを設けて結論に結び付けたりと、アクティブに参加できる研修。担当した外部の人間も、「カイシャ色に染まっていない」ためか、社内の講義をする上司たちとは、また一味違った雰囲気で、パリッとしていましたね。

 

 

ビジネス英会話の講義では、イケメンな外国人が担当だったり。

 

 

新人研修を振り返っても、講義したカイシャの人たちの顔を思い出せませんが、外部の人を招いたビジネス研修だけは、いまだに顔を覚えています。

 

 

そのくらい印象深かったし、学びが多かった。

 

 

あとは……そのくらいかな?(笑)

 

 

東京に本社を置く大企業だったので、新人研修のバジェットが比較的大きかったのかな。当時は業績も右肩上がりだったみたいだし。

 

 

一般的に見ればやっぱり「優良企業」だったのかもしれません。

 

 

新人研修後半戦

 

 

その後も、新入社員研修はやはり学校の延長みたいなペースで進みました。

 

 

工場見学に行かせてもらったと思ったら、そこで集団行動の訓練みたいなやつやらされたり。

 

 

社会見学のような形で自社製品と関連のある現場を見せてもらったと思ったら、感想文を欠かされたり。

 

 

感想文……。

 

 

マジで中学校以来でした。

 

 

日本の就職活動では、作文とか感想文を書かされるそうですね。周りの同期は慣れていたのか……? カヤさんの、「みなさん、この見学が終わったら感想文を書いてもらいますから!」という発言に、疑問を持たなかったみたいだし。

 

 

海外で大学を卒業して、中途採用ながら今回の研修に参加していたコダモンは、この「感想文」にも衝撃を受けました。

 

 

学校の延長かよ!

 

 

大きな声でツッコミたかった。

 

 

……。

 

 

そうこうしているうちに、研修も大詰めです。

 

 

いよいよ、実践的な内容になってきた。

 

 

新入社員研修のフィナーレを飾るのは、実際のビジネスの現場を想定した「プレゼン大会」です。

 

 

コレが、なかなか凝っていたんです。

 

 

その内容をザックリまとめると、「新規商品開発」から「受注」までを、3日間かけて達成する、という内容。そして、最終的にそれをプレゼン形式で発表するというもの。

 

 

こう書くと、けっこうカンタンに見えますよね。

 

 

しかしコレ……

 

 

実際に顧客とやり取りするのです

 

 

具体的には、研修で分けられた「班」が、それぞれひとつの「企業」として、自社製品を売り込み、受注までこぎつけるのです。

 

 

「どうせ、おままごとだろう…」

 

 

そうたかをくくっていた、わたくしコダモン。

 

 

そのシビアさに舌を巻きました

 

 

いや、本当にけっこう厳しかったです。 

 

 

研修が行われていたのは大会議室ですが、そこから少し離れた別の会議室に、顧客が待ち構えている部屋が設けられた。その別室の前には、顧客企業のバナーも立てられています。

 

 

そして、そこへたどり着くのも、アポなしでは不可。

 

 

そもそも、その顧客とアポが取れるかどうかも、売り込む企業(班)の内容次第。

 

 

全て自分達で作戦を立てて、計画を練るのです

 

 

なんで最後の最後に、ここまで一気にハードルが上がるんだ…(笑)

 

 

つい前日まで居眠りしていた同期たちも、もうそれどころではありません。

 

 

研修を先導していたカヤさんも、ここからはサポートなし。珍しく、「みなさん、頑張ってください!」と激励してくれています。

 

 

ここ3週間続いていた和やかな研修の空気は、この最終課題で一気に変わっていくのです……。

 

 

泣く子も続出した最終課題

 

 

ここに来て、「班長」に選出された意味を痛感します。

 

 

最終課題が決まった途端……

 

 

班員達の視線がコダモンに集中したのです

 

 

まぁ、無理もない。

 

 

なにせ、この課題。これまで「のほほん」と大学生をしていた新入社員に対しては、意地悪な内容です。

 

 

ビジネス経験も何も無い彼らは、唯一の中途採用で社会人経験のある、コダモンに真っ先に期待します。

 

 

「班長、どうします……?」

 

 

「何をしたらいいんですかね……?」

 

 

とりあえず社内会議(班内会議)を始めますが、班員はオロオロです。

 

 

どうやら、みな本当にどこから手をつけていいのか、わからない模様。日本の大学教育の弊害なのかな……インターンなどで、在学中に企業に属することも多いドイツとは大違い。

 

(合わせて読みたい)

 

 

なにはともあれ、まずは班内で「役決め」をします。格好良く言えば、「役職の割り振り」。

 

 

なにせ、今回の課題は、一企業として接客から顧客対応、受注までのフォローアップと、ムダに細かい設定が設けられているのです。

 

 

班員に、「開発」「技術」「営業」……とカンタンな「役」を与えていきます。

 

 

班員唯一の女性を「アカウントセールス」という形で電話のアポ取りに回ってもらい、ビジネスの戦略を立てていきました。最終的には、自社(班)で開発した新規案件に"OK"を出してもらうのがゴールです。

 

 

……。

 

 

実はこの課題、「良い商品」が提案できるかどうかは、どうでもよく。

 

 

カイシャ(班)としてしっかり顧客対応ができるかどうか

 

 

これが判断したかったみたいです。研修的には。

 

 

ビジネスの現場を、仮想空間で実戦してみる。そして、そこから「何か」を学ばせる。そんな目的があったようです。

 

 

…と、そうこうしているうちに、アポ取りに行っていた同期が帰って来ました。

 

 

結果は良好。さっそく「顧客」が待ち構えている別会議室へ行ってみると……。

 

 

そこは物々しい雰囲気

 

 

50代前半のおじさんが一人。こちらに睨みをきかせています。

 

 

この人が、「お客さん」。部長の肩書きです。研修は日程が限られているので、決定権のあるレベルの相手と最初から直接交渉していく……という、現実ではあまり無い設定。

 

 

しかし、この人がなかなかの鬼門でした。

 

 

コダモンは、一応うちの企業(班)でチームリーダーという肩書きだったこともあり、率先してカイシャ紹介から製品紹介、売り込みをかけました。

 

 

1回目は、「わかりました。前向きに検討します」という、なんとも曖昧な形で終了。

 

 

そして、2回目。

 

 

その会議室に入って喋りだすやいなや、そのおじさんが睨みをきかせながら言います。

 

 

「コダモンさん、御社はあなたしかプレゼンしないのですか?」

 

 

そして、班員を名指しで指名します。

 

 

「〇〇さん(班員)。あなたは今回の案件で、弊社にどのような利点をもたらしてくれるのですか?」

 

 

固まる班員。

 

 

無理もない……。このおじさん、超コワイのです。

 

 

コダモンは、なんだかんだドイツや中国でいくつかの修羅場をくぐってきているので、セールストークを駆使してこの人を「なだめつつ」しゃべっていましたが……。

 

 

基本的に超機嫌が悪い

 

 

客という立場をフルに利用して、上からキビしい言葉をかけてきます。

 

 

これが、他の企業(班)に対しては、さらに威圧的だったようで……。

 

 

泣く人が続出

 

 

その顧客との打ち合わせから帰ってくる班は、その班員の女子がもれなく泣かされていました。

 

 

それほど、お客さんだったこの男性は、キビしかった。

 

 

その後も粘り強く交渉した結果、コダモンの5班は案件がようやくまとまりました。

 

 

そして、最終日(実習3日目)。

 

 

全ての企業(班)がその顧客との調整を済ませ、研修の行われている新人研修場の大会議室で、受注を目指したプレゼン大会が行われます。

 

 

仰天な幕切れで新入社員研修が終了

 

 

まず、プレゼン大会の結果からご報告。

 

 

コダモンの5班は……。

 

 

見事1位

 

 

そして、案件の受注獲得。

 

 

しかし、さらにビックリな結果が、その後に待っていました。

 

 

各社(各班)のプレゼンを、しかめっ面で聞いていた、「お客さん」。

 

 

プレゼンが終わると、さっそく壇上に立って挨拶します。そして開口一番……

 

 

「厳しくしちゃってゴメンね」

 

 

……ん?

 

 

顔も、仏様のように、にこやかです。

 

 

そう、株式会社◯◯という名刺まで持っていたこの男性は……

 

 

カイシャの人間

 

 

だったのです。

 

 

細かく言えば、どっかの企画推進室の部長さん。

 

 

周りの同期達は、「マジかよ…」と、喜んでいいのか驚けば良いのか、微妙な表情。

 

 

なにせ、ついさっきまで鬼のようなダメ出しを容赦なく投げつけてくる人だったので……。

 

 

女の子の同期は、その厳しさで泣かされていたのに、安堵と嬉し泣きで、また泣いています(笑)

 

 

この研修最終日までの「ビジネス実習」は、このカイシャの風物詩のようなものだったのです。カヤさんも、もちろん事前にこのような事態になることを知っていた。

 

 

というより、おそらくカヤさんもつい4〜5年にコレを経験した、「経験者」。

 

 

なにはともあれ、このビジネス実習は、全て緻密に計算された、カイシャ側が用意したシナリオだったのです。

 

 

その後は実習の丁寧な総括がありました。そのおじさん上司曰く、我々の5班は、コダモンが「おしゃべりが上手」過ぎた。そう、チームリーダーが「場慣れ」し過ぎていたので、それ以外の班員たちをテストする意味で、どんどん他の班員を攻めたのだとか。

 

 

最終的には、プレゼンも打ち合わせも高評価。

 

 

1位を獲得できたことも単純に嬉しかったですが、それよりも厳しい言葉にもめげずに頑張る班員の姿が、この時はとても印象的でした。

 

 

今となっては、良い思い出。(泣く人が1人もいなかったのも、コダモンの5班だけ)

 

 

……。

 

 

こうして、コダモンの長くて短い新入社員研修が終わりました。

 

 

同期達は、カリキュラム通りに3ヶ月の日程が組まれているので、その後実地研修という形で、散り散りになっていきました。

 

 

最後の飲み会で、「部署の配属になったら会いましょう!」と言ってくれた、同期たち。これからは、実習などではない、実際のビジネスの現場が待ち受けています。

 

 

彼らとの再会はいったん先になりますが、コダモン自身は、既にこれからが本番。

 

 

いよいよ、カイシャの部署へと配属されていきます…!!