ハーフが会社に就職してみた_第14話_営業やってみた(part2)

営業部で働いていたら日本のカイシャの「働き方」をイヤでも経験できた。ドイツハーフは理解できずに苦しみます。

営業部での仕事を通して「カイシャ」を知った

 

 

コダモンです。

 

 

ハーフであるコダモンが、日本のカイシャに就職してみた話。  

 

 

第14話:営業部での仕事を通して「カイシャ」を知ってみた。

 

 



 

 

4月に新卒たちと一緒に入社した、中途採用のドイツハーフ。

 

 

配属後にさっそく転属になったりと、最初の3 ~ 4ヶ月は落ち着かない日々が続きました。

 

 

しかし、営業部へ転属となってからは、チームとしての動きがハッキリしている組織体制で、周りのベテラン営業マンたちから学びつつ、「日本式」の働き方を経験していました。

 

 

ハトリさんやシノハラさん、頼れる上司の存在は有難かった。

 

 

彼らは、営業歴20年以上のベテラン。そして、例外なく日本の顧客対応に長けた、「日本式」でのたたき上げ社員でした。

 

 

終電で帰宅することなんかは慣れっこだし、カイシャに泊まる事もあるとか無いとか…。まさに絵にかいたような「日本のサラリーマン」。そして、「営業マン」。

 

 

そんな中、海外から来たコダモンにとっては、この「日本式」が常に不安材料でした。

 

 

いつまでも変わらない「カイシャのやり方」

 

 

あからさまに「古いやり方」で仕事をこなす周りの同僚たちと部署の組織体制。

 

 

それがどんなに不効率な手法であっても、「ウチはこうだから」といって、それに従います。労働時間もとても長く、定時に帰宅する人なんていない。

 

 

17時半の定時間際にソワソワし始めるのは、ドイツハーフくらい。周りの人間は、定時になっても微動だにしません。

 

 

終業のチャイムがオフィスに鳴り響いても、誰も席を立たない。

 

 

職場の「空気」が定時に帰宅できる雰囲気ではない

 

 

これには、マジで参っちゃいました。

 

 

こっちは仕事を頑張って早く終えて、定時に切り上げられるのに、一人だけ帰ると超目立つのです。

 

 

周りの同僚の中には、同じように仕事はとっくに終わっているはずなのに、「上司がまだいるから」みたいなアホな理由で机に向かって頑張り続ける人もいます。

 

 

残業代をしこたま稼ぎたいのか何なのか…。どんだけ非効率なんだ…?

 

 

そんな中、営業部で残業をしていた、ある日のこと。

 

 

この日は珍しく、ドイツ時間の午後13時からの打ち合わせに、電話会議で参加しなければならない日でした。

 

 

この開始時間は、日本時間でいうと、サマータイムで20時。夜に始まる会議です。

 

 

その会議を無事に終えて、コダモンは自分のデスクで黙々と議事録を書いていました。「早く帰りたいな…」と思いながら。

 

 

21時をまわったオフィスには、残業で残っている人がまだけっこういます。営業部の課長さんは、3人ともまだ普通に残業している。

 

 

「残業マスター」のシノハラさんも当然のごとく残業しているし、周りの部署でもデスクの明かりを灯して働いている人がチラホラ。

 

 

「こんな遅い時間なのに…。まだこんなに人が残ってるの?」

 

 

みんなどれだけ仕事が好きなんだ…。

 

 

ちなみにドイツハーフは、いつも基本的に残業を避けていたので、この遅い時間帯にデスクに残っているのは珍しかった。

 

 

メモを見ながら、パソコンに向かってひたすら打ち込んでいるコダモン。

 

 

すると…。急に後ろから肩を「ポンッ!」と叩かれました。

 

 

「頑張ってるなー感心感心~!」

 

 

ちょっとだけ「ビクッ!」となって振り向くと、ガハハハッと笑いながら話す上機嫌な上司がいました。

 

 

日頃から関わりのある他部署の部長さんです。

 

 

「何? 会議だったの? うんうん、ご苦労さんだねぇ~」

 

 

そんな事を言いながら、世間話を始めます。

 

 

「はぁ…」と、苦笑いでその場を適当にやり過ごすコダモン。部長さんは上機嫌で去っていきます。

 

 

それは、たった数分の間の出来事でしたが…。

 

 

何かとてもつもない違和感を感じました。

 

 

この時、自分は「褒められた」はず。

 

 

そうなのですが…。同時に、何かとてつもない「不安感」も覚えたのです。

 

 

その日の帰り道。

 

 

相変わらずの徒歩通勤で、珍しく22時をまわっていた都内の薄暗い道を、トコトコと歩いていました。

 

 

「頑張ってるなー感心感心!!…」

 

 

その上司のコトバに感じた違和感。足取りもゆっくりで、その事だけをずーっと考えていました。

 

 

たった数分で立ち話程度の、何の変哲もない会話だったはずなのに。

 

 

歩きながら考えてはいたけれど、そこで感じた違和感の原因は、もうとっくに気づいていた。

 

 

しかし、それをなかなか認めたくない現実と葛藤していたのです。

 

 

それは…。

 

 

残業 = 頑張っている

 

 

という、このカイシャの古い考え方。

 

 

そして、それがこのカイシャの中での常識として「良し」とされていること。

 

 

この日、21時を過ぎても珍しくデスクに残っていたドイツハーフ。そんな時に声をかけてきた、年配の部長さん。

 

 

彼は、あからさまに「残業 = 頑張っている」という事を、メッセージとして伝えてきたのです。  

 

 

要するに…。

 

 

「いつもは早く帰っちゃうのに、今日は頑張ってるじゃないか!」

 

 

このように言っていたいたのも同然なのです。

 

 

カイシャに勤続ウン十年の年配社員は、若い社員がどれだけ効率よく働こうが働かまいが、おかまいなし。

 

 

自分がこれまでカイシャ生活の中で何百、何千時間と残業をしてきたので、「残業が当たり前」だと思っているのです。

 

 

そして、そうやって残業している人が「頑張っている人」という、思考停止な考え方。

 

 

カイシャの人間たちは、誰もがたくさん残業して「頑張っている姿勢」を見せることで、評価されてきたのです。

 

 

「頑張ってるなー感心感心…!!」

 

 

この言葉を若手にかけることで、残業を良しとする文化を、次の世代へとしっかり受け継いでいる。そのような組織体制なので、残業がなくなる事は…。この先も無いのです。

 

 

…。

 

 

そうやってカイシャ生活をしている中で、業務に明け暮れながら、時には残業もしながら。だんだんと社内に溶け込んでいく自分がいました。

 

 

ドイツハーフは、確実に「日本のカイシャ色」に染まっていたのです。

 

 


営業部を通して知ったカイシャ

 

 

営業部は、体育会系の部署でした。

 

 

シノハラさんを含めた課長職の50代の3人の上司は、バブル時代もちょっとだけ経験していたせいか、とにかく「たたき上げ」という印象がピッタリ。

 

 

縦の上下関係にはけっこう厳しいし、顧客に対してはこっちが引いてしまうくらい低姿勢になることもできます。

 

 

酸いも甘いもたくさん経験してきた、ベテラン営業マンたち。

 

 

ちなみにコダモン自身は、実際に体育会系の出身です。

 

 

日本の中学~高校で部活動をガッツリ経験してきたので、先輩後輩の関係とかは慣れたもの。

 

 

営業部への配属とそこでの部署の上下関係には、学校時代の先輩後輩の関係を思い出すような…そんな縦社会の構図がありました。

 

 

上司の中には、「仕事は見て覚えろ!」とか、「新人は下積みが大事だ!」みたいな感じの人もいたし。

 

 

カッコよく言えば、「部下の責任は上司の責任」みたいな、兄貴肌な考えをもった人もいた。

 

 

そんな環境の中で、部署の中に存在する、変なルールや古い慣行にも、おとなしく従ってみました。

 

 

 

新入りである自分が朝出社したら電気をつけたり

 

 

 

一週間の行動をまとめる報告書にムダな時間を費やしたり

 

 

 

残業はエンドレスでやるくせに出社時間には超キビしかったり

 

 

 

有給を取る時は「すみません、この日はお休みをいただきます…」と、部署の朝会で超低姿勢に報告したり。

 

 

 

…。いやー…。

 

 

 

マジで面倒くさい

 

 

 

カイシャの伝統なのか年功序列なのか、はたまた単純にどうでもいいルールなのか…。

 

 

その根本は何でもいいけど、単純に面倒くさい。

 

 

そして、その見えないストレスがハンパじゃない。

 

 

誰もが「出る杭」にならないように、いつまでも集団意識の中で行動している。

 

 

そのようにして、社内には「周囲に不快な思いをさせないようにルールを守ろう」みたいな考え方が多すぎて、キツイ。

 

 

それはエチケットでも思いやりでも何でもなく、どうでもいい暗黙のルール。「ウチのルールだから」と言って、大昔から継承されただけのモノ。

 

 

そうやって社員がみんな低姿勢に従い続けるので、その上流にいる年配社員が、古いルールをあたかも「世界の常識」とでも言わんばかりに徹底している。この負の連鎖が、マジで非効率なのです。

 

 

自然と、組織体制の下流にいる若手たちへ、雑用などのしわ寄せが来るし。

 

 

その働き方自体は、ドイツハーフにとってはとーっても時代錯誤だった。

 

 

しかし…。

 

 

自分が日本の社会人経験に乏しいのも、また事実。

 

 

ここでは「学ぶことも多い」と割り切って、とりあえずは職場の慣行に流されるままに働いていました。

 

 


最初は楽しかった営業部での仕事

 

 

営業部でドイツ顧客を相手にしている時は、楽しかった。

 

 

 

日々の仕事の中で簡単なミスをして怒られるような事もあったけど…。基本的には「海外顧客向け営業」という職務内容上、語学スキルを活かせる部分が評価されていました。

 

 

ドイツ語が母国語だということ。そして、英語も得意。ここに来て、ハーフである強みを実感…。

 

 

コダモンが当時担当していた業務内容は、おおまかには2パターンでした。

 

 

「これから売り込みたい製品」を、開発から顧客と一緒になって行うことを目的とした、いわゆる開拓営業。

 

 

そして…。

 

 

「既存の製品を新しい分野と顧客に使ってもらう」という、拡販を目的とした営業。

 

 

まぁ、それだけ見れば、よくある普通の営業の仕事。

 

 

普通の仕事…なのですが、その対象が「海外顧客」だったので、当初は比較的「ラク」だったのです。

 

 

何が楽だったのかというと、コミュニケーションの相手が「海外」だということ。

 

 

例えば…

 

 

・担当する製品の社内の技術者が外国人であることが多かったこと

 

 

・社内のやり取りにも「ドイツ支社のローカル社員」が含まれるため、英語またはドイツ語でコミュニケーションすること

 

 

・それらをまとめる報告先が、尊敬する上司のシノハラさんだったこと

 

 

これらのおかげで、最初のうちは「自分の長所が活かせた」のです。シノハラさんも、仕事を高く評価してくれたし。

 

 

他の社員には真似できない、ドイツ語でのコミュニケーション。母国語を活かせるからこそ、仕事もスムーズでした。自分の強みが活かされていたし、日本のカイシャで働く「ドイツ人」に、ドイツ顧客も満足していた。

 

 

そんなこともあり、業務の遂行度は高かったし、営業部での仕事を単純に楽しめたのです。

 

 

残業も少なかったし。(コレ大事)

 

 

カイシャでの「やりがい」というのは嫌いな言葉なのですが、この時の仕事には少なからず「やりがい」がありました。

 

 

外国人とやり取りをすることで、日本のカイシャでもフラットな関係で仕事ができたり

 

 

コミュニケーションが日本語以外であるため、語学が堪能な部分で重宝されたり

 

 

上司が自分のポテンシャルを正しく評価してくれたり

 

 

そんなこんなで、営業部での最初の年は、ドイツ顧客を相手に営業していました。

 

 

お客さんにもけっこう重宝されたし、たくさん「興味」をもたれた。

 

 

入社数か月だったにもかかわらず、取引先からの紹介で、外資系からヘッドハンティングにあったことも…。数回ありました。

 

 

そのような状態だったので、当時は正直なところ「カイシャ楽勝〜♪」と思いながら働いていました。

 

 

1日の仕事が電話会議だけの日があったり

 

 

事業計画に携わる数字作りにも時間をかけられたり

 

 

都内の顧客を訪問して17時に直帰したり

 

 

プレッシャーもそれなりにありましたが、「納期に追われる」ような切羽詰まった状況は、全くなかったのです。

 

 

仕事が忙しい時期もあったけど、やるべきタスクは明確だったし、結果が出ているのが自分でもわかりました。

 

 

自分のスキルも活かせていて、この時は「楽しい思い出」の方が多かったです。自分の語学スキルがようやく発揮できたし、それを評価してくれる上司もいた。

 

 

…。

 

 

「コダモン、お前はもっとカイシャの中身と仕組みを知れ!」

 

 

そのようなお達しのもと、転属となった営業部。

 

 

そこでは、「ストレス大国のサラリーマン」を経験するどころか、意外や意外。とてもスムーズな働き方ができました。

 

 

「カイシャ生活順調じゃん!」

 

 

そう思って有意義に過ごしていた、当時のドイツハーフ。 

 

 

ハトリさんやシノハラさんという頼りになる上司のもと、比較的自由度の高い働き方を任されていたし、自分の語学力を活かして結果を残していた。そして、社内の人間関係づくりも着々と進みました。

 

 

自分が当初の目標としていた、「グローバルな人間になる」という部分も、この時は社内外の「外国人」とやり取りをする仕事が多かったため、充実していたのです。

 

 


部署の中身は「ザ・日本のカイシャ」だった

 

 

営業部への配属でカイシャ生活が充実していたのは、ひとえに「ドイツ顧客案件のみ」を担当していたからでした。

 

 

この時は、顧客側の働き方も思考も、これまで自分が住み慣れたドイツの、ドイツ人によるものだったのです。

 

 

担当するプロジェクトに関して定期的にやり取りをしていた社内の人間も、もちろんドイツ支社のドイツ人がメイン。

 

 

そのような環境下では、相手が「お客さん」であっても、社内の目上の人であっても、基本的にその人間関係はフラットなのです。

 

 

ドイツ生活が思い出されて…。やっぱり楽だった。

 

 

相手が外国人だから、親しくなれば尊敬語を使うことも無いし。

 

 

年功序列が無いから、社内でも上下関係を気にしなくていいため…。日々の業務は、とてもストレスフリーでした。

 

 

日本のカイシャの営業部に所属していながら、コダモン自身の仕事はとても「海外要素」が多かった。

 

 

しかしその反面、本社の自分が所属する営業部に目を向けると…。

 

 

部署内は当たり前のように年功序列の体制で、その働き方は、前述の通りとっても日本式。

 

 

シノハラさんやハトリさんのベテラン営業マンから学ぶことも多かったけど…。

 

 

基本的には、「めんどうだなぁ…」と何度も感じていました。

 

 

「ハンコの押し方が悪い!」と言われて書類を突っ返された事もあったし。

 

 

コピー機の使い方一つ取っても、お局みたなおばちゃん社員に細かく言われたりもした。

 

 

そんな環境の中で「何でこんな効率の悪いこと未だにやってるの…?」と思うこともしばしば。

 

 

そもそも、理解不能なルールも多かったし…。

 

 

朝のちょっとした遅刻には厳しいのにエンドレスで残業してたり

 

 

毎週の仕事をリポート形式で細かく報告したり

 

 

これが「ザ・日本のカイシャ」の働き方なのだなーと。半ばあきらめてはいました。

 

 

「それが社会人だ!」

 

 

「カイシャ組織の中では当たり前だ!」

 

 

そんな声も聞こえてきそうですが…。

 

 

これらは全て単純に「日本の超ウザイ働き方」なのです。

 

 

ドイツでドイツ企業に転職した今、ハッキリ断言できます。

 

 

何はともあれ、この「日本の働き方」。

 

 

それの働き方に、営業部の中でドップリと浸かっていくことになるのです。