ハーフがカイシャに就職してみた_第9話〜入社編(part3)〜

ハーフが「カイシャ」に就職した話。新入社員研修に参加してみた。

入社編part3 - 新人研修を受けてみた

 

 

コダモンです。 

  

 

ハーフであるコダモンが、日本のカイシャに就職してみた話。 

  

 

第9話は、新入社員研修に参加してみた。(前編) 

  

(第8話はコチラ) 

 

 

 

研修初日。

  

  

席についたコダモンと新入社員の前には、既に2人のカイシャの人たちが座っていました。

  

  

この人たちが人事部の担当者か…。これから一ヶ月間の研修を先導する人たちです。周りの新入社員たちの雰囲気からすると、彼らはお互いに既に顔を知っているようでした。

  

  

そんな同期たちとは対照的に、中途採用の入社で、しかも周りと違う面接プロセスを踏んできたコダモンにとっては、そこにいる誰もが初対面。

  

  

相変わらずチラチラと見られながら、指定されていた席にちょこんと座るハーフ。 ちょっとだけ緊張します。

  

  

しかし…。どうやら、そこにいたカイシャの人たちは、コダモンの存在を知っていたようでした。おそらく、準備段階から周知されていたんでしょうね。

  

  

「海外から入社してくる中途採用者がいるらしい…」と。そして、その人が新入社員にも参加すると。

  

  

しかもそいつは見た目が外国人なハーフ

  

  

そりゃあ事前にマークされますよね……。

  

  

それでも、入り口付近で挨拶を交わしたカイシャの人たちは、おっかなびっくりでした。

  

  

安心してください。日本語通じますよ! (笑) 

  

  

何はともあれ、研修を先導するのは人事総務部の中でも新入社員の育成担当となる所属で、所属長と数人から成り立っていました。

 

 

研修の選任になる人が1人、そして、そのオブザーバー的な位置にいる人が1人。

  

  

その年にコダモン達の担当になったのは、小柄でかわいらしい感じの女性社員。

  

  

名前はカヤさん。なぜか異様にハキハキしたしゃべり方。この研修で新入社員のお手本になろうとしてるんだな…。さっそく、「みなさん、おはようございます!」からの、「あれ、声が小さいですね…もう一度。おはようございます!!」というお決まりのパターンをやっています。

  

  

しかしカヤさん、どう見ても若い。20歳後半くらいかしら? もしかしたら自分より若いかも。新入社員に交じって同い年くらいの中途採用者がいるのは…。やり辛いだろうな。しかもハーフだし……。

  

  

そんなことを考えつつ、新人研修に紛れ込んだコダモンの研修初日がスタートしました。

 

 

自己紹介でホッとされる

 

 

新入社員研修は座学が1か月。その後も、実地研修やらなんやかんやで、研修自体は続くそう。ですが、コダモンは最初からこの1か月だけの参加と決まっていました。

 

 

あくまで「カイシャを知るため」の研修参加だったので。

  

  

おおまかな研修のスケジュールによると、まずはカイシャのエライサンや各部署の人のあいさつ。そこから、カイシャのビジネス概要などから、ビジネスマナーや基本行動にいたるまで。多岐にわたる内容で、とりあえず講師の話を聞く時間がけっこう続くらしい。コレが約一週間。まさに「座学」ですね。

 

 

そしてその後は、国内の主要拠点での研修や見学などが一週間。最後に、まとめとしての試験的な研修期間やグループワークなどがあり、これがまた本社で二週間。

 

 

しめて一か月。けっこう長い…。

  

  

コダモン個人の入社スケジュールは、この1か月の研修を経験したのちに、部署への配属となっていました。

  

  

そのため、良くも悪くもこの新入社員研修は「適当に」やろうと思っていた。

  

  

そんなこんだで、研修初日のこの日は、自己紹介からスタート。

  

  

例のごとく非常にハキハキしたしゃべり方のカヤさんが自己紹介。そして、他の同期たちが続きます。

  

  

「○○大学の○○学科出身です!」

 

  

「趣味は〇〇です!」

  

  

そんな自己紹介が続くこと数十人。みんな、どこか就職活動の名残を感じさせるような、お手本通りの自己紹介。 頑張って声をはりながら、ちょっとしたボケをする人もいます。

  

  

そして、自分の番が回ってきた。

  

  

…すると、明らかに周りの注目度が変わったのに気づきます。

 

 

「この外国人、いったい何者…?」というみんなの心の声が聞こえてきそう(笑)

  

  

しかし、こちとら生まれもってのハーフです。

  

  

日本のこの雰囲気は慣れたもの

  

  

ドイツから来たこと、ハーフであること、日本語が(第一)母国語であること…。そんな情報を交えつつ、淡々と自己紹介。すると、みんななんだか少しホッとした表情に。カヤさんまで(笑) 

  

  

「ハーフあるある」なのですが、「日本語が通じる」という安心感で、相手にホッとされます。…まぁ、分からなくもないけど。

 

 

今さらですが、こういう時に「自分は日本に戻って来たんだ…」と実感します。ドイツでは外国人とかハーフなんて、まったく珍しくないのです。

  

  

何はともあれ、研修初日に、コダモンが社内で認識された瞬間でした。

 

 


社員研修は学校の延長?

 

 

そんなこんなで研修が始まるのですが、さっそくビックリな行事がスタート。

  

  

「班決め」です。

  

  

…班決め。コレ、最後にやったのはおそらく中学生の頃じゃなかったっけ!? 

  

  

記憶が正しければ、たしか高校の時はもう既に「班」なんて無かった気がする。関東の田舎出身ですが。

 

 

もう10年以上聞いていなかった「班」という単語に、ちょっとした懐かしさを覚えます。

  

  

それはともかく、「班決め」。

  

  

実は、座った席には名札が置かれていて、その席順をブロック分けしたところで班は既に出来上がっていた模様。ただっぴろい研修場に長机があって、そこに適当に座らされていると思っていたのですが…どうやら、人事の事前の緻密な打ち合わせのもとに「班」が決まっていたらしい。

 

 

後々の、班ごとのグループワークなども視野に入れて、文系と理系をうまく混ぜたり…みたいなことですね。

  

  

ちなみに、コダモンは5班。

  

  

1つの班に6~7人で、確か7班くらいまであった気がする。

  

  

…と、ここでようやく隣の席1名と前後の席の2名が同じ班のメンバーだと気づきます。

  

  

コダモンの5班は、女の子が一人の計6名。

  

  

当たり前ですが、みんな若い。休み時間になると、「ドイツから来たんですか?」「今何歳なんですかー?」と元気に質問してきます。

 

 

みんな屈託なくて、素直で。まだまだ初日ですが、班の中はとってもいい雰囲気。

  

  

これは仲良くやっていけそうだ! 

 

  

そして、案の定コダモンが最年長者。海外で「大人の学生たち」との付き合いも多かったせいか、同じ班の同期たちが、とても若く感じられる。

  

  

ちなみに、これは後々判明した事ですが、どうやらこの時点で各班の男女比までもが考慮されていたらしい。なんとも入念な下準備です。恐るべし新入社員研修…。

  

  

そして次に、「班長」決め。

  

  

「班長」…!! 

  

  

超懐かしい響きです。「班長」。小中学校では班長がプリントまとめたりしてたな…などと思いながら、さすがにこの時点で「マジか」と思ってしまいました。

  

  

コレはちょっと流石に時代を逆行しすぎでは…? 

  

  

もう学生じゃないんだし。

 

 

班決めなんて、本当に中学生以来です。しかも「班長決め」までするとは…。

  

  

うーん。

  

  

班と班長を決める事で、単純に統率を取るためか…。それとも、これから属するカイシャ組織の部署にあたる縮図を、この研修で導入したかったのか? 定かではないですが、利便性とかそっちのけで、学生に戻ったような感じがして、なんとも拍子抜けしてしまいました。

  

  

しかもコダモンが班長に(笑) 

  

  

まぁ…。一番年上だしね…。

  

  

研修初日は、この他にもおエライサンが挨拶に来たりしました。この時の雰囲気も、「校長先生の話」みたいな感じてしまって、内容が頭に入ってこない。「諸君はこれからは社会人として…」とかなんとか、長ったらしく語っていたけれど……。

  

  

どれもこれも久しぶりの日本だったせいか、なぜか「日本の学校」を連想させることが多かった、カイシャ1日目でした。

 

 


社訓の唱和という恐ろしい行事

 

 

2日目。

  

  

ここで、研修中に一番衝撃を受けた儀式が行われました。

  

  

それは……。

  

  

社訓の唱和

  

  

これです。

  

  

……わかりますかね? コレ。ドイツハーフは、本当にビックリしました。

  

  

もしかしたら、日本のカイシャではいたって普通のことなのかも。

  

  

企業が掲げるモットーとするようなカイシャの理念を、みんなで一斉に合唱するのです。

 

 

ご丁寧に、折りたたんでカードサイズになるよな小さな冊子に、まとめられています。「いつでも持ち歩けるように」なのだとか。

 

 

そこに、「このカイシャの人間としてどうあるべきか」などや、「価値創造」に対する姿勢などが、つらつらと何十行にもわたって書かれているのです。

   

  

「我々、〇〇(カイシャの名前)グループは、〇〇の精神に則り…」みたいなかんじのやつが、長々と続きます。

 

 

これを、みんなで一斉に、大きな声で唱和するのです。

 

  

東証の一部上場企業で、事業をグローバルに営み、数万人規模でビジネスを展開するカイシャだったのに……。これはさすがに、「戦時かよ!」とツッコミたくなりました。

  

  

ドイツの友人に教えたら「ジョークだろ?」と、ドン引きされた、衝撃の儀式……。

  

  

これはヤバかった。

 

  

例の冊子を渡されるだけならまだいいのですが……。

  

  

カヤさん先導で一斉唱和がスタート

  

  

周りの同期は躊躇せず「○○精神に則り…!!」としっかり大きな声でやっています。

  

  

ちなみに、カヤさんお得意の「声が出ていない!」「元気がない!」のおかげで、この日は5往復ぐらいしました。

  

  

「これ…マジか」

  

  

完全に面食らってしまった、ドイツハーフ。

  

  

しかも、どうやら研修中は毎朝やるらしい……。

  

  

さらに3日目以降は、班の代表が一人ずつ交互に前に立って、日替わりで先導するような形で行われた、企業理念の唱和。

  

  

どっかの変な宗派に入ったみたいな気もしたし、何より古い。

  

  

カヤさんも研修プログラムに逆らえないだけなのか、それともみんな本気でコレに何らかの効果があると思っているのか……? 周りの同期たちも、さすがにこればかりは、最後までイヤそうでした。

  

  

効果といえば。自分の卒業校の校歌を今でも覚えているように、この時の企業理念も、唱和のし過ぎで、今もちょっと頭に残っています(笑) 

  

  

…。やはり効果があったのか……? 

  

  

いずれにせよ、「集団行動」「組織一丸」の精神を、まざまざと見せつけられました。

 

 

校歌を大きな声で何回も歌わされた、学校時代。ここでも、「社訓の唱和」に、学校さながらの状況が思い出されました。

  

  

ちなみに、わたくしコダモン。班長という役柄上、先頭に立って、大きな声で何度も企業理念の唱和を先導しました。

  

 

郷に入れば郷に従えと言いますが…。さすがにこの儀式には違和感を覚えて、研修担当者たちに「毎年コレやっているんですか?」と聞いてみた。

 

 

それでも、「もちろん!」と元気な返事が返ってくるだけ。マニュアルが絶対だと思っているフシがあるのか…。異論なんて唱えないんだろうな。

  

  

後々部署に配属になった時に、この「社訓の唱和」に一度も出会わなかったのが、不幸中の幸いでした。

 

 


「日本のサラリーマン」になる現実

 

 

このように、最初の数日新入社員研修に参加してきただけですが、コダモンは既にお腹いっぱいになっていました。

  

  

別段疲れるような作業もしていないし、仕事のプレッシャーなども全く無いのに。

  

  

学校時代の集団行動を思い出したのか、ちょっとした拒否反応すら覚えました。

  

  

海外で自由に過ごしてきたハーフに、やっぱり日本のカイシャは合わないのか…?

  

  

「適当にこなそうと思っていた新人研修」に、不安だけが募ります。

  

  

その後は、とっかえひっかえで、社内の人間による各部門の事業説明などが続きます。いわゆる座学ですが…。そこで講義をする誰もが、「これからお前らはカイシャの人間なのだぞ!」という、熱いメッセージだけを残していきます。

  

  

それはそれでいいのですが……。

  

  

とにかくやることが古い

  

  

全部古い。

  

  

コレが本当にグローバル企業の、しかも一部上場という大企業の中身なのか…? ただの新入社員研修ですが、その中身は「超」がつくほど日本的。

  

  

カイシャ側が、学生生活でノホホンとしていた新入社員たちを激励したいのはわかります。

  

  

これからの大事な「人財」として、新人たちを育てたい気持ちもわかります。

  

  

ただ……。

  

  

「これからしっかりカイシャ色に染まってくださいよ」

  

  

というメッセージが強すぎて、イタイ。

  

  

いろいろな役員が挨拶と講義をしましたが、その中には、こんなことを言ってくる人もいました:

  

  

「考えてみてください。あなた達はもう既に、こうやって座って話を聞いているだけでお給料が発生しているんですよ?」

  

  

このようなことを、上から目線で…。しかも入社数日の新入社員に対して。

  

  

「いったい何を考えているんだ…? 」

  

  

本気で心配になりました。

  

  

「あなた達はもう既に、こうやって座って話を聞いているだけでお給料が発生しているんですよ?」 そんなメッセージを聞いた新入社員は、「はぁ…」と言う以外、どう受け止めればいいのでしょうか。

 

 

「お前らはまだ使い物になってないのだぞ」みたいな事が言いたいのかな。それはそれで、若者たちのやる気を削ぐだけだと思うのですが。

  

  

コレも、年功序列と新卒一括採用の弊害ですね。新入社員を、あたかも「今お前らはまだお荷物」と言って扱わんばかりの姿勢。

  

  

新卒でも、即戦力としての採用をする欧米とは異なる、日本のカイシャの採用システム。

  

  

「頑張って早く一人前になってくれよ!」

  

  

こういう激励ならまだマシなのですが……。

  

  

「お前らはこれからカイシャの人間だぞ!」

  

  

このようなメッセージが、講義のいたるところに込められていて……。結果、それを聞いているだけでドッと疲れてしまった。

  

  

うーん…。

 

 

やっぱり、自分にはまだ「日本で社会人になる」という意識がなかったのかな。

  

 

そして、これからサラリーマンになるという心の準備が、この時点でおそらくまだハッキリとできていなかったんでしょうね。

  

  

しかも、日本のサラリーマンに

  

  

…。

  

  

研修担当のカヤさんに、「お疲れ様です」と挨拶して、帰宅して行こうとする同期たち。

  

  

「私はこの後、まだ仕事があります。だから、『お疲れ様』は不適切。帰るときには『お先に失礼します』と言いましょう!」

  

  

このように、すかさずカヤさんの指導が入ります。

  

  

…そんなシーンを目の当たりにして、「自分はやっぱり日本のカイシャに入社したのだ…!」という実感がわいくる。

  

  

何とも言い難い感情が自分の中で錯綜する中、この新人研修を通して、さらに「カイシャ」を知ることになるのです。